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社説:下請け「いじめ」 大手が率先し悪弊絶て

京都新聞 2024年7月19日 16時0分

 自動車部品の大量生産に必要な「金型」を下請け業者に費用を払わず長期保管させたとして、トヨタ自動車の子会社が公正取引委員会から下請法違反で再発防止を求める勧告を受けた。

 強要した下請け企業は49社に上り、30年に及んだ社もあったという。大手企業のコスト削減のために負担を押しつける実態は「下請けいじめ」ではないか。

 自動車業界では今年3月、日産自動車も製造委託先への支払代金を不当に引き下げたとして公取委から勧告を受けた。

 自動車各社は下請けに犠牲を強いる取引を再点検し、見直す責任が問われよう。

 下請法は、大手企業が発注者としての優越的な立場を利用して下請け企業に金銭やサービスを求めることを禁じている。

 自動車の「エアロパーツ」と呼ばれる外装用部品の開発や販売を手がけるトヨタ子会社は、少なくとも2年前から使用する予定がない金型や検査用器具など664個を保管させていた。

 また、いったん納入を受けた車体パーツを、60社以上の下請けに不当に返品していたともされる。

 金型は重さ数トンのものもある。いつ追加の発注があるか分からない中で、丁寧に保管する必要があり、関連費用もかさむ。発注元のトヨタ子会社はこの費用を取引相手に押しつけていた。

 国は2019年に示した指針で自動車業界に是正を促したが、業界の古い悪弊は根強く、最大手で違反が続いていた。

 自動車大手は円安で輸出が伸びて好業績が続く一方で、原材料高に苦しむ中小企業が少なくない。政府が掲げる「経済の好循環」を実現するためには、適正な価格転嫁が不可欠だ。

 いびつな取引の是正に向けて政府が監視、指導を強めるとともに、業界全体の人手や品質の確保の観点からも取り組むべきではないか。

 気になるのは、ここに来て1956年施行の「下請法」を改名する議論が政府や与党内で始まっていることだ。

 下請け業者に対する代金の支払い遅れや買いたたき、納入品の返品などで、公取委による指導や勧告は2023年に8281件あった。

 下請け会社を「パートナー企業」「協力会社」などと呼ぶ企業が増えているのは事実だが、不当な上下関係の実態を糊塗することであってはなるまい。

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