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「民生委員」ってどんな活動しているの? なり手不足に悩み、それでも感じるやりがいとは

京都新聞 2024年6月9日 6時10分

 地域で困りごとを抱える人を必要な支援につなぐボランティア「民生委員」の不足が続いている。「忙しい」「難しい」とのイメージを持つ人もいるが、そもそも全国団体の調査では「活動を知らない」人が9割を超える。どのような活動なのか。京都府内で充足率が最も低い八幡市で取材すると、住民に寄り添う姿が見えてきた。

 5月下旬。八幡市橋本の民生委員高木多佳子さん(78)は、見守り先の平岡由利子さん(87)方を訪れた。玄関先に明るい声が響き、体操や趣味の話題など20分ほど談笑が続いた。平岡さんは「一人だと話す機会がなかなかない。安心して相談できる相手」と話す。

 民生委員は地域の高齢者や障害者、ひとり親世帯などが必要な支援を受けられるよう、関係機関へ橋渡しをする。全国民生委員児童委員連合会が全国1万人を対象に2022年に行った調査では、39%が「民生委員に相談している・意向がある」と答えた。地域に不可欠な存在だ。

 高木さんは64歳から民生委員を続ける。高齢者の見守りが中心だが、過去に生活に困窮した若者の支援に関わることもあった。「言葉で知っていても内容を知らないことばかりだった。世の中を広く見ることができ、人生の宝物になった」と振り返る。

 同じ日、橋本地域の民生委員本郷俊明さん(79)は、独居女性(80)方で近況を尋ねていた。昨春に夫の認知症が急激に進み、体調を崩すほど対応に悩んだ。異変に気づいた本郷さんの仲介で福祉サービスなどを受けるようになり「声をかけてもらえて心強かった。相談するきっかけを作ってもらえた」と感謝する。本郷さんは「当事者は声を上げづらい。僕らの仕事は専門家につなぐこと。本当にそれしかない」。

 ただ、委員は足りていない。3年ごとに行う改選で、2022年には全国で1万5千人の欠員が生じた。高齢化や働くシニア層の増加などが背景にある。一般への認知度も課題で、同年の連合会の調査で「役割や活動まで知っている」と答えた人は5.4%だった。

 八幡市と京都府の民生児童委員協議会長を務める本郷さんによると、市内の委員数は4月16日時点で、定員155人に対して138人。充足率は89%で府内市町村で最も低い。定員を満たしている地区もあるが、自治会加入率が低い地区では不足が目立つという。「欠員のある地域は、受け持つ世帯が増えてしわ寄せが起きる。このままではすぐに手を差し伸べられる人がいなくなってしまう」

 来年12月には次の改選が控える。市民生児童委員協議会は5月、活動のPRに市内12小中学校であいさつ運動を行った。前回改選時に続き、市民向けの講演会も開く方針だ。

 それでも、なり手不足への悩みは尽きない。高木さんは委員を退く予定だが、後任は見つかっていない。

 どんな人であれば、民生委員をこなせるのか。高木さんは言う。「究極的には『人間が好き』という人であれば、誰でもできる。難しい活動だと最初から思わず、まずは手を挙げてもらいたい」

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民生委員 厚生労働相から委嘱を受ける非常勤の地方公務員。地域住民の相談相手や支援機関へのつなぎ役として、無報酬で活動する。交通費などの支給はある。任期は3年で再任が可能。児童委員も兼ねる。

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