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社説:夏休みの食支援 公的関与の拡充が必要

京都新聞 2024年7月24日 16時0分

 京都、滋賀の小中学校などで夏休みが始まった。たくさんの楽しい思い出をつくってほしいと願う半面、長期休暇を憂鬱(ゆううつ)に感じる家庭が増えているという現状にも思いを寄せたい。

 子どもの貧困問題に取り組む認定NPO法人「キッズドア」の調査によると、小中学生のいる困窮世帯の60%が夏休みを負担に感じ、短縮や廃止を望んでいた。

 物価高で、給食がないときの食事の用意や、かさむ光熱費への不安が背景にある。

 別の団体が大津市で先週開いたフォーラムでも、「夜まで何も食べられずおなかが痛くなる」「よりしんどくなる絶望の期間」など、子どもの切実な声が紹介された。

 こうした家庭では、子どもの発育の遅れや栄養不良などの影響も見られるという。見過ごせない。

 困窮家庭に食料を無償提供する各地のフードバンクも危機感を抱いている。

 認定NPO法人「セカンドハーベスト京都」(京都市)によると、昨秋ごろから、支援を求める家庭が増える一方、企業などの食品の寄付は減少が目立つ。

 夏休みに空腹でつらい思いをする児童を減らそうと、1世帯につき約12キロの食品を届けている。始めた6年前は57世帯だったが、今年は千世帯に増加。それでも全ての要望に応えられてないという。

 浮き彫りになっているのは、フードバンク活動への公的なサポート態勢の不十分さだ。

 日本では、農林水産省が活動助成金の窓口となるなど、食品ロス対策が主眼となっている。これに対し、米国やフランス、韓国などは貧困対策と位置づけ、予算の拡充や寄付をしやすい環境整備が進んでいると専門家は指摘する。日本も生活の安全網としての役割に重点を移すべきだ。

 先の国会で成立した「こどもの貧困解消法」は、家庭の経済力で生じる子の成長や教育、体験機会の格差是正を掲げる。国や自治体の責務や民間への財政支援も明記する。言うまでもなく、十分な食事は生活の基本だ。

 京都のNPOによる夏休みの食料支援は、就学援助制度の受給世帯が対象のため、教育委員会の協力が得られた京都市、宇治市、八幡市に限られている。交流の場でもある「子ども食堂」への支援も含め、自治体間の溝を埋める踏み込んだ関与が求められる。

 子どもたちの置かれた状況に目を凝らし、あまねく支える手だてを講じることが欠かせない。

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