Infoseek 楽天

社説:イスラエル入植 静観はもはや許されぬ

京都新聞 2024年7月26日 16時0分

 イスラエルの無法な占領政策を断罪し、やめさせる義務が、日本をはじめ国際社会にあると明確に示した。

 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸や東エルサレムでイスラエルが続ける占領政策について、国際司法裁判所(ICJ)が国際法違反と非難した。

 武力で占領した地に自国民を移住(入植)させることを禁じたジュネーブ条約に違反している上、イスラエルはパレスチナ占領で生じた損害の賠償義務を負っていると指摘。占領の早期終結と入植者の撤退や新規入植を停止するよう求めた。

 2022年に国連総会がイスラエルの占領によるパレスチナ人の権利侵害についてICJの法解釈を求めたのを受け、約50カ国の判事が審理した。

 イスラエルの占領政策は、ガザ地区のイスラム組織ハマスによる昨年10月の越境攻撃を引き起こした一因とも指摘される。今回の「勧告的意見」に法的拘束力はないが、国際社会で最も権威ある裁判所が公然と批判した意味は重い。

 今後は拘束力のある安保理決議に向け、各国の行動が必要だ。

 イスラエルは1967年の第3次中東戦争で東エルサレムやヨルダン川西岸を占領した後、入植を既成事実化させてきた。その規模は70万人以上とされる。

 特にネタニヤフ政権は強引な入植を後押し、批判を受けても「もともと自分たちの土地だ」と聞く耳を持たない姿勢を続ける。

 ガザ侵攻だけでなく、西岸と東エルサレムで入植者の暴力をイスラエル軍が支援しているのが実態という。

 ICJの指摘で注目すべきは、国連の全加盟国がイスラエルの占領を合法と認めない義務を負っているとした点だ。イスラエル以外のすべての国に対し、占領政策の維持につながる協力をやめる義務があるとも述べている。

 この間、国際社会は、オスロ合意(93年)に基づくパレスチナ国家とイスラエルの2国家共存が唯一の中東和平策としながら、入植を本気で止めようとしなかった。

 今月の主要7カ国(G7)外相会合は入植拡大の撤回を求める共同声明を出した。日本政府が入植者4人の資産凍結を決めるなど、各国が動き始めている。「力による現状変更」を許さない姿勢の徹底が求められよう。

 アラブ諸国はICJの判断を歓迎し、占領終結への措置をイスラエルに求めている。日本も早急に明確な態度を示すべきだ。

この記事の関連ニュース