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社説:敦賀原発不適合 リスク直視し廃炉せよ

京都新聞 2024年8月2日 16時5分

 日本原子力発電が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県)が、原子力規制委員会の審査会合で、原発の新規制基準に適合しないと結論付けられた。原子炉直下に活断層があることを否定できないとした。

 東京電力福島第1原発事故を踏まえ作られた新規制基準は、原子炉などの重要施設が活断層の真上にあってはならないと明記している。

 これに照らし、規制委はきょうにも、再稼働の審査「不合格」を決定する。

 2012年に規制委が発足して以来、27基の原発が審査対象となったが、不適合判断は初めてとなる。地震リスクが排除できない以上、妥協してはならない一線にほかなるまい。

 審査の焦点は、原子炉の北300メートルにある「K断層」の活動性と、それが原子炉の直下を走る「D断層」と連動するかどうか、という点だった。

 規制委が現地調査でK断層の活動性を指摘したのに対し、原電は、K断層は動かず、D断層とも連動しない、と反論したが、規制委は「原電の説明に明確な証拠はない」として退けた。

 事業者が原発の安全性を証明できなければ、再稼働が認められないのは当然だ。

 そもそも原電は15年に再稼働に向け審査を申請したものの、資料に誤りが千カ所以上見つかり、20年にはデータの無断書き換えも判明した。審査が2年間中断し、原発運転の資質があるのかさえ疑われるありさまだ。

 原電は調査を続ける意向だが、審査を引き延ばしたい思惑が透けて見える。現に抱える震災リスクを直視し、速やかに廃炉を決断するべきである。

 大手電力9社と電源開発(現Jパワー)が設立した原電は、原発の電気を売る卸事業者だ。電力会社が基本料金と購入費を支払い、電気料金に反映されている。

 敦賀原発2基のうち1号機は既に廃炉作業中で、東海第2原発(茨城県)は規制委の審査に合格したが、地元自治体の反対で再稼働の見通しは立っていない。

 福島原発事故以来、発電をまったくしていないが、基本料金収入で経営が維持されてきた。事業性も運営能力も疑問符が付く中で、大手電力が丸抱えで支えることは、各電力利用者の理解を得られまい。

 地震列島での原発立地の困難さを改めて示した。安全を最優先した判断が揺らいではならない。

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