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「自分の街を好きになって」市民大学の3代目スタッフ会長 危機乗り越え、次なる一手

京都新聞 2024年8月6日 9時0分

 京都府宇治市で開かれている生涯学習講座「宇治市民大学」。運営する市民ボランティアでつくるスタッフ会の会長を務める。地元の歴史や文化を学んでもらうことを通し「自分たちが住む街を好きになってもらいたい。郷土愛が醸成できれば、さらにいい街になるのでは」と語る。

 京都市伏見区生まれ。大学卒業後、大手不動産開発会社に就職し、宇治市内を含め多くの住宅開発を手がけてきた。退職の時期が近くなり、同市に定住した60歳ごろ、以前からの知人だった当時のスタッフ会会長から「退職後に手伝ってほしい」と誘いを受けた。

 同大学は1999年度に始まった市主催の講座が前身で、「市民による市民のための大学にしよう」と2007年度からボランティアが全ての運営を担っている。現在は半年間の講座を3コース設け、60~80代のスタッフ15人が企画から講師の依頼、会場の設営、資金のやりくりまでを行う。

 自身は現役時代、仕事で各地を転々としていたこともあり、地域の歴史や文化への興味は薄かった。スタッフ会の勧誘にもなかなか首を縦に振らなかった。

 ただ念頭には、ある体験が浮かんでいた。1980年代に携わった桂坂(京都市西京区)の住宅開発で、地域に残る「大枝山古墳群」(市指定史跡)の発掘調査に伴い記録映画の製作に関わった。「地域の歴史を知ることは住む人たちの誇りになり、大切なことだ」。こうした実感もあって退職後、スタッフ会へ入会した。

 市民大学の活動では2014年、鳳凰堂の「平成の修理」を終えた平等院(宇治市宇治)をテーマにシンポジウムを企画したところ、高齢者を中心に多くの市民が集まった。学びへの意欲にあふれる受講者と、専門知識をかみ砕いて説明しようとする講師の熱意に触れ、やりがいを感じた。

 2年ほど前に3代目の会長に就任した。当時、新型コロナウイルス禍の影響で受講者が減少し、存続の危機にも見舞われた。徐々に持ち直しつつある今、「魅力のあるテーマを考え、積極的にPRしていきたい。地域を深く知る手がかりにしてもらいたい」と力を込める。宇治市南陵町。

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