Infoseek 楽天

無気力に座る子ども「この授業に意味はあるのか」 25歳が教壇で感じた疑問 運営するフリースクールで模索

京都新聞 2024年8月6日 13時53分

 「いっくん、これ見て」「ギターの弾き方教えて」。京都府福知山市でフリースクールを運営する大西逸生さん(25)の元に、次々と子どもたちが駆け寄る。「順番やで」と優しく一人一人と向き合う。

 中学時代の担任や社会科の先生の影響で教員を志すようになった。福知山高を卒業後、滋賀大教育学部に進学。教育実習で子どもたちと接する楽しさを実感し、学校教諭への道を着実に進んでいた。

 大学3年で新型コロナウイルス禍を経験。オンライン授業の合間、インターネットを通じて教育に対する多様な考え方に出合い、進路に迷いが生じた。

 「学びが楽しく感じられるような場を作りたい」と、学校で非常勤講師を務めながら、独自に教育事業を手がける道を選んだ。非常勤で教壇に立ち、無気力に座っている子どもが気にかかった。「授業や学校になじまない子にとって、この授業に意味はあるのか」との思いが募った。

 2023年4月、福知山市天田にフリースクール「Reducation」を開設。子ども自身が学びたいものを意欲的に学べる環境を模索する。

 スクールでは、子どもの自己肯定感を高め、他者を尊重する姿勢を育むことを意識している。新たにできるようになったことをしっかりと褒める。成果や行動を他人と比べないよう促し、周囲との違いが当たり前であることを伝える。

 通う子どもたちに変化が出てきた。段ボールを使った家や車の工作では、スーパーなどと交渉して材料を調達。協力して一つの作品を完成させた。「目的意識や自主性が芽生えてきた」と手応えを感じる。

 退職後の高齢者や障害者、外国人と多様な人と接して学びを得る場を目指している。「先生というより周囲にいる大人の一人として、自分らしく成長できるよう支えたい。学校と同様、フリースクールが子どもたちの選択肢にある世の中にしたい」

この記事の関連ニュース