株価が激しく動揺している。混乱の拡大を警戒しつつ、円安・株高の基調だった相場の調整を視野に入れて冷静に受け止めたい。
東京株式市場では5日の下げ幅が4451円と過去最大を記録、直近3営業日の下げ幅が7600円を超えた。6日には3200円余り戻す荒い値動きだが、7月11日に付けた史上最高値の4万2224円から1カ月足らずで7千円以上の下落となっている。
株式市場の激しい変動はアジアや欧米にも及んでおり、日本でも当面は不安定な相場が続くとみられる。
背景には、海外の投機筋が日本株を売り、投資家心理が大きく動揺した要素が大きいとみられる。過度に不安を募らせるのは避けたい。
先週後半からの株価急落のきっかけとなったのは、2日に発表された米雇用統計の悪化だ。AI(人工知能)関連企業の収益性への疑問も重なり、世界経済を引っ張る米国の景気 減速への警戒感が急速に高まった。
その中でも、売りが売りを呼ぶ展開となった日本の株価急落が際立った。日銀が先月末に追加利上げを発表したことによる、円ドル相場の反転が大きいとみられる。
5日は一時1ドル=141円台と約7カ月ぶりの円高ドル安水準となったが、6日には146円をつけた。
この間の歴史的な円安は、輸出企業への追い風となった上、海外投資家から「日本株は割安」と受け止められ、バブル期を超える株価の上昇を後押ししてきた。
しかし、「実体経済を反映していない」との見方も強く、金融正常化に踏み出した中で、株式相場の一定の反動が表れた面もあろう。
ただ、想定を超える株価の乱高下は最近の投資ブームに冷や水を浴びせたのは間違いない。特に、新たな少額投資非課税制度(NISA)を使って投資を始めた人は困惑したかもしれない。
余裕のある資金で分散投資し、長期的な資産形成に臨むという姿勢を改めて確認し、パニック的な売買に引きずられないように心がけたい。
岸田文雄首相は「貯蓄から投資へ」をスローガンに、個人の資産形成を促してきた。総額で2千兆円とも言われる家計の金融資産を市場に引き入れ、株価浮揚や経済成長につなげる狙いがあった。
投資リスクの十分な理解を広げることが欠かせない。