Infoseek 楽天

社説:中東情勢の緊迫 戦火の拡大、食い止めよ

京都新聞 2024年8月8日 16時5分

 中東全域に戦火が広がる事態は避けねばならない。イランやイスラエルなど当事者は立ち止まり、国際社会は連携して自制を強く促すべきだ。

 先月末、イランで起きたイスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏の暗殺をきっかけに、これまでになく情勢が緊迫している。

 ハニヤ氏は新大統領の就任式のため首都テヘランを訪れ、滞在先で死亡した。ハマスを支援するイランは、パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルの犯行と断定し、最高指導者のハメネイ師自ら報復の意思を示した。

 イスラエルは関与を明言していないが、ネタニヤフ首相は対抗姿勢をあらわにしている。

 懸念されるのは、周辺国を巻き込む事態の悪化である。

 イスラエルは先月、自国への攻撃に報いるとして、親イラン武装組織の拠点があるイエメンとレバノンを空爆した。レバノンではヒズボラの最高幹部が殺害された。イランの報復に各組織が連動する可能性も指摘されている。

 背景には1979年のイラン革命から続くイランとイスラエルの対立がある。ただ、今回の緊張拡大は、ハマス壊滅を理由にガザ侵攻を長引かせ、子どもら民間人の殺りくを重ねるイスラエルの強硬姿勢に起因しているのは明白だ。

 人質解放の成果を示せないネタニヤフ氏には、国内で反発が高まっている。6月に戦時内閣を解散して極右勢力が発言力を増しているのに加え、国民の不満や批判をそらすために国外への攻撃を利用している面も否めない。

 イスラエルの後ろ盾となっている米国の対応が問われる。先進7カ国の各国にイランの説得を求め、エジプトやカタールなどの仲介国にも働きかけているという。バイデン大統領はネタニヤフ氏に対し、再び緊張の激化を招いた場合は支援しないと伝えたとされるが、打開への見通しは不透明だ。

 イスラム協力機構(OIC)はイランの要請を受け緊急外相会議を開いた。報復阻止へ結束が求められる。

 ハマスは後任の最高指導者に強硬派のシンワール氏を選んだ。国際刑事裁判所(ICC)が、ネタニヤフ氏とともにガザでの戦争犯罪などの疑いで逮捕状を請求した人物という。徹底抗戦の意思表明といえよう。

 交渉によるガザ停戦が遠のきかねない危機にある。日本をはじめ国際社会はあらゆる外交ルートを通じ、中東の沈静化へ手を尽くすときだ。

この記事の関連ニュース