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南海トラフ地震臨時情報「注意」を発表 社会はどう動く、私たちはどう備える

京都新聞 2024年8月8日 17時50分

 8日午後4時43分、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、宮崎県南部平野部で震度6弱の揺れを観測した。気象庁は、南海トラフ地震臨時情報を初めて発表した。有識者の検討委員会が南海トラフ地震につながる可能性を検討し、8日午後7時15分、南海トラフ地震臨時情報(注意)を発表した。今後、1週間程度は巨大地震のリスクを確認し、万一に備えながら日常生活を送ることが求められる。

■南海トラフ臨時情報とは

 今後30年の発生確率が70~80%とされる南海トラフ巨大地震。最悪の場合、東海-九州沿岸の広範囲を巨大津波が襲い、死者は32万人と想定される。京都府と滋賀県も南部を中心に震度6強の揺れとなり、甚大な被害となる恐れがある。

 国は2019年から、「南海トラフ地震臨時情報」という制度をスタートさせた。南海トラフで巨大地震の危険性が普段より高まった状況になったとき、避難を促すために発表される。

 臨時情報が発表されると、甚大な被害が想定される高知県や和歌山県などの沿岸部では、住民の事前避難や学校の休校といった措置がとられる可能性がある。太平洋に面していない京滋でも、物資の買い占めやデマ騒ぎなどが起こるかもしれない。

 一方、現代の科学で南海トラフ地震の予知は困難とされる。専門家によると、何の前触れもなく巨大地震が起こったり、臨時情報が空振りになる可能性も高いという。私たち京滋の住民はどのように備えておけば良いのか。

■南海トラフ地震のメカニズムは

 南海トラフ地震は、日本南方のフィリピン海プレートが、日本列島下のユーラシアプレートに潜り込み、境界面に蓄積したひずみが一気に解放されることで起こる。想定される震源域は、静岡-宮崎沖の広大な範囲。それが一気に動く「全割れ」の場合、東日本大震災と並ぶマグニチュード(M)9級の巨大地震となる可能性がある。

 歴史を振り返ると、南海トラフは約100~200年間隔で巨大地震を起こしてきた。1707年の宝永地震は全割れだった。一方、直近2回は東海沖と南海沖が時間差で起こる「半割れ」だった。

 1854年には、安政東海地震の32時間後には安政南海地震が発生した。1944年の昭和東南海地震に続き、1946年には昭和南海地震が起きた。半割れといえども全てM8以上の大地震で、いずれも大きな津波被害が出た。

 また、想定震源域でM7クラスの地震が起こる「一部割れ」や、人体には感じない地殻の動き「ゆっくり滑り」が、巨大地震を誘発する可能性があると考えられている。

■臨時情報、詳しく解説

 半割れや一部割れ、通常と異なるゆっくり滑りが発生した場合、直後から臨時情報を発表するかどうかの検討が始まる。

 現象の発生後、5~30分程度で気象庁が「調査中」という臨時情報を出す。すぐに有識者が南海トラフ地震につながる可能性を検討し、最短2時間で臨時情報が発表される。

 半割れと判断されると、「南海トラフ臨時情報(巨大地震警戒)」が発表される。仮に東海沖が半割れした場合、和歌山県や高知県など割れ残った震源域の沿岸部で、1週間程度の住民避難や休校などの措置が取られる。

 一部割れやゆっくり滑りの場合は、「南海トラフ臨時情報(巨大地震注意)」が発表され、1週間程度は巨大地震に備えるよう呼び掛けられる。

 交通機関も対応する予定で、JR西日本は「基本的に列車の運転を継続するが、一部地域では安全確保を最優先に運転見合わせの対応も判断する」と話す。社会が災害前夜の雰囲気に包まれると予想され、社会経済活動への影響やデマ騒ぎも懸念される。

 京都府や滋賀県には、沿岸部の住民が自主的に避難してくる可能性がある。食料や医薬品の買い占めが起きる恐れもあり、冷静な対応が求められる。和歌山県や三重県など太平洋沿岸部へ外出する際は、現地の津波浸水想定を事前確認するなど、慎重な行動が必要になる。

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