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社説:夏休み明けに 子の悩みに耳を傾けて

京都新聞 2024年8月23日 16時0分

 もうすぐ京都、滋賀でも小中高校の夏休みが終わる。旅行や帰省で楽しい思い出を携えた子もいれば、さまざまな事情で気の重い時間を過ごした場合もあるだろう。

 休み明けの時期、学校の再開が苦痛で、しんどい気持ちを抱える子に目を配りたい。発する言葉やいつもと違う行動に、SOSが込められていないだろうか。

 文部科学省の調査では、2022年度に小中学校で30日以上欠席した不登校の児童生徒は30万人近くに上る。10年連続で過去最多である。新年度が始まる春とともに、夏休み明けは不登校になりやすい時期とされる。

 学校内外で専門的な相談や指導を受けられていない不登校の子は約4割という。行政や民間団体が設けている窓口にアクセスしやすくなるよう、関係機関はいっそう連携を強めてほしい。

 子どもが一人で悩みを抱え、自ら命を絶つようなことはあってはならない。

 警察庁の統計では、昨年の小中高生の自殺者は513人で、過去最多だった前年から横ばいという深刻な状況にある。月別では10月61人、9月54人、8月52人と夏から秋の多さが目立つ。原因や動機では「学校問題」が最も多く、「健康」「家庭」と続いた。

 こども家庭庁が昨年まで過去5年分の事例を分析した報告書では、2割の子が「周囲に自殺の危機を気付かれていなかった」という。兆しを発見するのが難しい課題が浮かび上がる。

 思春期は友人関係やいじめ、学業や進路への不安など悩みは多様で、一人で解決できない問題も少なくない。登校を無理強いすることなく、周囲が心の内に寄り添って耳を傾けたい。

 政府は昨年、子どもの自殺対策で緊急強化プランをまとめた。児童らに学習用として配られたタブレット端末を活用し、リスクの早期把握を進めるとした。専門家でつくる対応チームを都道府県で設置する方針も盛り込んでいる。

 これらの施策がどう効果を上げているのか。プラン策定から1年以上が経過したが、検証や情報発信が十分とは言い難い。

 不登校や自殺対策に取り組むNPO法人が開設しているサイトでは、チェックリストで学校を休ませるか保護者が判断したり、ゲームを通して悩みを吐露したりすることができる。

 公的機関の窓口に限らず、相談方法にも多様な選択肢があることを広めたい。

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