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社説:待機児童の「減少」 質とニーズ満たす保育こそ

京都新聞 2024年9月8日 16時0分

 希望しても認可保育所などに入れない待機児童が、国の調査で減少傾向にある。こども家庭庁は、今年4月1日時点の待機児童数が過去最少を更新して2567人になったと発表した。

 一方で、保育所に入りやすくなったとの実感が持てない乳幼児の保護者や家族も少なくないのではないか。自宅に近いなど特定の保育所のみを希望しているといった理由で入所できていない子どもは、国の集計に含まれていない。

 こうした潜在的な待機児童は、今年4月時点で全国に7万1千人いる。昨年からは4800人増えており、2年続けての増加になった。

 国は待機児童ゼロを少子化対策の柱に掲げてきた。女性の就業率は高まっており、共働き世帯の割合も増えている。数あわせでなく、利用しやすさや保育の質をより重視した環境の整備が求められる。

 今回の調査で、待機児童はピークだった2017年の10分の1になったという。全国の市区町村のうち、87.5%が待機児童「ゼロ」になったとした。少子化で就学前人口が減るとともに、保育所の整備が進んだことが背景にあろう。

 一方、大津市は待機児童数(184人)、前年からの増加数(178人)の両方で全国最多だった。住宅開発が進み、京都や大阪などから子育て世代の移住が続いているからだ。

 市は保育施設の整備にも力を入れており、定員に対し500人程度の空きがある。だが、保育士不足で定員いっぱいまで子どもを受け入れられていない。

 市は保育士採用時の年齢要件を緩和し、滋賀県も大学などの奨学金返済を補助するなど後押しをするものの、近隣自治体も似た対策を講じ「保育士の奪い合いになっている」という。

 26年度からは、保護者の就労を問わない「こども誰でも通園制度」も全国で始まるだけに、担い手確保は喫緊の課題だ。

 保育士は平均年収が全産業平均より約100万円下回るなど、待遇面が問題視されて久しい。国などは賃金改善を進める保育所を支援しているが、踏み込み不足の感が否めない。

 安定的な財源を確保した上で、処遇改善と保育士増員を含む働き方改革を一段と推し進める必要がある。退職した保育士の掘り起こしなども、官民の連携で進めたい。

 子育て世代の流出が多い京都市は、待機児童が11年連続でゼロだった。地域によっては定員割れの民間保育園も増えており、少子化を踏まえれば、経営悪化への懸念も高まる。

 半面、市の潜在的な待機児童数は483人と前年より39人増で、需要と供給のミスマッチも指摘される。働く親や子どものニーズの変化に柔軟な対応ができるよう現状を検証し、改善していくことも欠かせない。
 

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