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【停電は命のカウントダウン】被災したときに医療的ケア児を守る対策は!?

KYTニュース 2025年2月2日 8時59分

能登半島地震から約1年。停電や断水が長引く被災地の状況を不安な気持ちで見ている人たちがいます。日常的に医療的なケアが必要な“医療的ケア児”です。県内には約240人いて停電が命に直結する人もいます。命を守るための対策はどうなっているのか、取材しました。

■被災時・・・。命につながる電源はどこに!?

鹿児島読売テレビ

鹿児島市の小学1年生、柿内 瑛斗くん。生後5か月の時、不慮の事故で低酸素脳症となり脳に障害が残りました。たんの吸引機に人工呼吸器。電源を必要とする医療機器は瑛斗くんの生命線です。

(母・祥子さん)

「酸素濃縮器といってここ繋げて酸素が流れるようになっている。切ったらちょっと苦しいのでちょっと流してあげて」

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食事は食材をミキサーにかけ、チューブで胃に直接注入します。併用している栄養剤や水は多めに備蓄していますが、ライフラインの断絶に 恐怖を抱えています。

(母・祥子さん)

「自助努力はより意識しないとなって、今回の地震を見ていると思う。でもやっぱり自分達だけでは乗り切れない物もあるのでライフラインなんか特にそう。せめて電源がどこで頂けるのか。命に繋がる電源がどこでいただけるのか」

鹿児島読売テレビ

実は先月、柿内さん家族は自分達で避難訓練をしました。医療機器やオムツなど瑛斗くんの物だけで50キロ以上。家族の着替えや食糧までは持ち出せませんでした。階段を何度も往復して荷物を下ろすと、指定された避難先の小学校へ向かいます。校長先生が畳やトイレのある支援級の教室へ案内してくれました。しかし、ここに非常用電源はありません。持参した蓄電池などを使っても半日ともたないことが分かりました。

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(母・祥子さん)

「吸引機の電源がなくなったら窒息する。おたおたしている間に電源がなくなってしまうんじゃないか」

鹿児島市によると224か所の指定避難所のうち個人も使える発電設備があるのは16か所のみ・・・。

■福祉避難所の現状は!?

鹿児島読売テレビ

では「福祉避難所」はどうでしょうか。大規模災害時に開設される予定の福祉避難所は、一般の避難所での生活が困難な高齢者や障害者などが対象です。

(鹿児島市地域福祉課・田代祐貴主任)

「(布団とか寝泊まりする用の物は?)通常の台風や大雨の時はご自身で、持ってきてもらうが福祉避難所として開設する大きな災害の時は隣に備蓄倉庫があるのでそちらから出す」

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鹿児島市の中央地域の拠点となる、この施設には食糧や水のほか段ボールベッドや毛布なども備蓄されています。バリアフリーの浴室やトイレも停電や断水が無ければ利用できます。防災用の自家発電装置も。

(鹿児島市地域福祉課・田代祐貴主任)

「(福祉避難所には全部発電装置がある?)「あるところとないところとある」

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鹿児島市には、協定を結んだ民間の老人ホームなども含め93の福祉避難所がありますが、非常用電源があるのは6割。元々入居者のいる施設も多く、災害時にスムーズに開設されるかも不透明です。

■積極的な取り組みの自治体の状況は!?何を学ぶ!?

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医療的ケア児の家族の不安はどうすれば解消されるのか。積極的に対策に取り組む自治体に話を聞きました。

(武雄市こども家庭課・福田 亜紀子さん)

「お母さまが『停電は命のカウントダウンなんです。あと6時間で我が子の命が尽きるという恐怖を考えられますか』って」

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佐賀県武雄市では令和元年の豪雨災害で医療的ケア児が被災し命の危険にさらされました。これを機に特に重度の医療的ケア児について行政や訪問看護師など支援者が集まって個別避難計画を作成。総勢30人ほどが関わり避難訓練を繰り返しています。

(武雄市こども家庭課・福田 亜紀子さん)

「それぞれ課題が違うので家から避難所に逃げるまでの経路とか、どうやって逃げるか荷物がどのくらいあるのか?どこに避難する想定?今のところ非常電源が必ずある所、停電しない所という所で武雄市では市役所とか」

情報伝達や荷造りの工夫など訓練のたびに改善を重ねていると言います。

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こうした取り組みについて、鹿児島市の考えは・・・。

(鹿児島市危機管理・中島智広課長)

「(行政主体で医療的ケア児者の避難計画や避難訓練をする考えは?)医療的ケア児者だけに限った話ではないが避難行動要支援者それぞれに応じた課題があると思うので市が主催する訓練の中に取り込んだ形で訓練とかもする必要があると思っている」

しかし、医療的ケアに電源が必要な人が市内にどれ位いるか、把握はしていないと言います。

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(鹿児島市危機管理・中島智広課長)

「非常用の電源は確保していく予定にはしているが、必要な方の人数とかが現在では把握できていないので、当面の方針としては5~10台ほど早めに確保する計画を立てて市役所・支所単位で置いて必要なところに持っていくのが現実的かなと考えている」

停電は命のカウントダウン。その恐怖は計り知れません。いつ起こるか分からない災害への対策に、猶予はありません。

鹿児島読売テレビ

国は2021年に災害時の避難に支援が必要な人について個別避難計画を策定することを市町村の努力義務としました。2023年10月時点で県内では9の自治体が策定完了と答えています。残る市町村に尋ねたところ、策定が進んでいる自治体もある一方、13の自治体では策定率が1割に満たないなど策定方法や進捗率にも自治体によって差があることが分かりました。専門知識を持った人手が足りない、地域住民の理解や協力が必要など苦悩する担当者の声も多く聞かれました。“誰一人取り残さない”ため、一刻も早く実効性のある取り組みが求められます。

(KYT news.everyかごしま 24年2月1日 放送 )

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