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「猫が散歩中に逃げ出した!」そもそも猫に「外出」は必要?環境省や獣医師も推奨する「猫の完全室内飼育」について保護猫の飼い主に聞いた

まいどなニュース 2024年7月11日 7時36分

「猫を散歩させていたらパニックを起こして逃げてしまった!」「外に出していた猫が行方不明になった…」。X(旧Twitter)などのSNSでは頻繁にこんな投稿を見かける。

獣医師によると、猫は犬以上に「環境の変化」に弱く、「散歩」は他の猫のテリトリー内に入る行為であり、ストレスが大きいという。

また環境省も、猫が交通事故や感染症にあうリスク、糞尿などによるご近所トラブル、予期せぬ繁殖、心ない人物からの虐待被害などを防ぐため、「猫は室内で飼育すること」を推奨。猫の室内飼いに適した環境やよくある疑問などについて、環境省の公式HPでも詳しく解説されている。

しかし、SNSや動画サイトなどには「猫の散歩動画」や「屋外で行動する猫の動画」が多く投稿されており、真似をする人も少なくない。

「猫を外に出す」ことは極めて危険

6歳になる保護猫の兄弟、クウくん&カイくんと暮らす飼い主さんは、「本当に猫のことを考えるのであれば、外に出すのではなく、安全な家の中で過ごさせてあげて欲しい」と訴える。

「外で生まれたクウとカイには他にも兄弟猫がいたそうなんです。でも他の兄弟は幼くして車に轢かれてしまい、保護主さんが急いでクウとカイを保護してくださり、今があります。猫の交通事故死(ロードキル)は2021年の調査で年間29万頭と推計されており、この数字からも、猫を外に出すことがいかに危険かわかると思います」(クウとカイさん)

AirTagなどのGPS装置やマイクロチップ、ハーネスなどをつけているから大丈夫、という意見も見受けられる。だが実際は、「猫が散歩中にパニックを起こして逃走した」「外飼いの猫が見当たらない…」といった投稿が日々ネット上で散見されるのが現状だ。

辛い思いをするのは飼い主じゃなく「猫」

「よく”猫は液体”と言われますが、しっかりとハーネスをつけていても、猫の滑らかな被毛やしなやかな動きによって簡単に抜けてしまいます。もし、クラクションや大きな物音などに驚きパニックになった猫が本気で暴れたら…ハーネスが抜けてしまうか、飼い主が猫に嚙まれたり爪を立てられたりしてリードごと手放してしまい、猫が逸走してしまう可能性が高いと考えられます。そうなれば交通事故に遭う確率は高くなります。AirTagもマイクロチップも交通事故を防いでくれません。猫が逸走して迷子になる、あるいは事故に遭うなどしたら、痛く苦しい思いをするのは飼い主ではなく、猫なんです」(クウとカイさん)

やむを得ない場合も「SNSには投稿しないで」

それでも、「家のなかに閉じ込めておくのはかわいそう」「元野良猫だから外の世界が恋しいはず」と、愛猫を外に出したがる人もいる。

「環境の変化が苦手な猫にとって、室内はもっとも安心できる自分のテリトリーです。あえてそのテリトリーを屋外まで広げる必要はないと思います。野良猫を保護した直後など、いろいろと手を尽くしてもストレスが多く、対処が出来ないようなやむを得ない場合などに一時的に散歩をさせることもあるかもしれません。

だとしても、その様子を撮影した写真や動画をSNSに投稿しないでほしいです。SNSで見かけただけでは、その猫が抱えている細かい事情までは伝わらず、真似をする人が出てこないとも限りませんから…」(クウとカイさん)

優先すべきは「人間側の満足」じゃなく「猫の命」

そもそもなぜ、「猫を外に出してはいけない」のか?この点について、愛玩動物飼養管理士の資格を持つクウちゃんとカイちゃんの飼い主さんは、「動物の愛護及び管理に関する法律を考えても、飼い猫は管理下に置くことが必要だと思います。外に出していたら管理ができているとは言えないでしょう」と、語る。

「猫が外にいることについては、感染症や近隣への糞尿等の被害、生態系への悪影響、給餌や排泄を確認できず病気の発見が遅れる、迷子の猫なのか外猫なのかの判断がつかず保護してもらえないなど、多くのリスクがあります。

それだけのリスクを負って得られるメリットは、『猫が楽しそうにしていた』と、人間が満足することだけです。室内でもキャットタワーを設置することなどで上下運動ができる環境を用意し、人間が一緒におもちゃで遊ぶなど、狩の欲求を満たしてあげれば、猫は満足してくれます」(クウとカイさん)

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)

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