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ほうろう看板に野球盤、スーパーカー自転車…あこがれの逸品にわくわく!昭和グッズ集める会社社長の夢とは

まいどなニュース 2024年7月8日 18時30分

 駄菓子屋めいた小空間。壁には懐かしのほうろう看板約50点が飾られ、雪印のスノー坊やがあしらわれた電飾看板がつられている。ライトも点灯可能で状態もよい。エポック社の初期型野球盤や広告付きのベンチ、スーパーカー自転車、ロボットなど整然と並べられた“男の子あこがれの逸品”の数々に、昭和の記憶がよみがえってくる。

 「特に色鮮やかなほうろう看板が大好き。独自のフォントと絵が魅力的で、現代の感性では少し不気味なところにもひかれる」と語るのは、オーナーの会社社長原田親志さん(54)=岡山市。ほうろう看板を中心に昭和のグッズやおもちゃなど数百点を収集する。

 きっかけは20年以上前、倉敷市の雑貨店で見つけたカエルの指人形。幼少の頃、どこにでもあった駄菓子屋は子どもたちの遊園地で、原田さんにとっても小さい頃、数十円を握りしめ、胸を躍らせて通った思い出の場所だった。「大切に遊んで、いつのまにか失ったもの。楽しかった懐かしい日々を思い出し、思わず買ってしまった」

 緑だけと思っていたが種類が多彩であると知り、色をそろえたいと集め始める。コンプリートすると、飾るための棚も欲しくなり、駄菓子屋でパンを売っていた陳列棚や、瓶ジュースを売っていた冷蔵庫を買ってショーケースにするなど、展示方法にもこだわるように。「集めるほど、わくわくする子どもの心を取り戻すような心持ちになった」という。

 中でも、なじみの駄菓子屋や、祖父母の家の壁に張られていたほうろう看板には、心をくすぐられる。主に明治から昭和中期にかけ、屋外用の広告として使用されたほうろう看板は、金属製で光沢のある塗装が特徴。テレビの普及に伴って役割を終えたが、その独特のデザインを愛好する人もおり、現在もコレクターは多い。

 グリコの走る人やカルピスの黒人マーク、宮本製菓のカンロあめ、不二家のペコちゃんポコちゃん…、どこかで見覚えがある看板がずらり。原田さんが最初に買ったのはナショナルの看板だ。タキシードを着てほほえむ電球君が面白く、〝キモかわいい〟ところがお気に入りという。

 一押しの品は、半人半牛の妖怪・件(くだん)があしらわれた、岡山肛門薬商会の広告看板だ。「効果くだんのごとし」(効き目にうそ偽りなし)とのだじゃれが効いている。「地元岡山にあった店ということと、妖怪の絵が珍しいと思う」

 岡山県立博物館の松井今日子学芸員は「当時の生活文化や世相がうかがえる貴重な資料。保存状態もよく、独特の魅力がよく伝わります」と評価する。

 倉庫を改装したコレクションルームにもこだわりがある。「小さい頃、押し入れに入って冒険したように、わざと天井を狭く、はしごで上がる中2階めいた空間をつくるなど自分の心がわくわくする環境にしている」と打ち明ける。

 現在は、超合金おもちゃにも手を広げ、「超電磁ロボ コン・バトラーV」「超電磁マシーン ボルテスV」「ゲッターロボ」などを求めている。昭和グッズは国外でも人気が高く、外国人の爆買いの影響で値段も上昇傾向にある。「かつて多くの文化財が国外に流出したが、これも日本のアートの危機だと思う。できるだけ日本に残したい。魅力的な逸品を探し続け、いつか同好の士に見てもらいたい」。昭和は遠くなっても、原田さんの夢はまだまだ膨らむ。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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