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東京都知事選 石丸氏が2位に躍進、「推し活」熱狂の一方、蓮舫氏が無党派層を集められなかった理由とは…豊田真由子が分析

まいどなニュース 2024年7月8日 20時0分

都知事選で小池氏の3選が決まりました。各氏の選挙戦、各出口調査による得票結果の分析、今後の影響等を考えてみたいと思います。

【小池氏】

都民ファ(9割)はもちろん、自民(6割)・公明(8割)支持層を手堅くまとめ、維新の4割、無党派層の3割を得ました。これまで都知事選で現職が出て負けたことはないわけですが、事前の各種世論調査で「小池都政を評価する」が5~7割あったことを考えても、公約達成や学歴報道等を巡る批判をねじ伏せた形になりました。

選挙戦では、裏金問題に起因する自民批判の逆風を避けるため、徹底的な“ステルス作戦”を取りました。自民議員は表立っては一切応援に入らなかった一方で、支持層への小池氏支援は浸透し、「自民支持の業界団体が多数集結しての小池支持大会」が開催されるなど、“ステルス作戦”が最大の効果を上げた結果になったと思います。

また、選挙期間中も「公務優先」であちこちを訪れた映像が、逆に「知事は日々こうした様々な仕事を行っている」という、他候補にはできない格好の選挙対策になっていました。選挙戦第一声に八丈島を選んだこと等も、たとえその地域の人口は少なくとも、その映像は「隅々まで行き届いた目配りをしている」という強いアピールになりました。小池氏の安定感と戦略勘は、他の追随を許さないものがありました。

【石丸氏】

石丸氏は、無党派層・若年層(10代・20代の4割)の票をかなり取り、結果、2位の得票となりました。都の有権者の中で最も数が多いのは、5割を占める「無党派層」であり、その3割台半ばの支持を得ました。また、「小池都政を評価しない」とした人の4割強を得て、蓮舫氏(3割)より批判票を多く取った形となりました。

選挙期間中のボランティア動員や、「推し活」的な多くの動画拡散等、これまでの既成政党や政治家とは、明らかに異質の熱狂が見られました。たしかに、組織の動員無しに街頭に数千人の聴衆を集めるというのは、「これまでの選挙や政治の常識」を覆したと思います。

選挙期間中の石丸氏の公式動画で、一番再生回数が多いものは86万回で、小池氏(2.1万回)、蓮舫氏(2.8万回)を大きく上回り、まさにSNS時代を象徴する新たな選挙戦を展開しました(再生回数は7月7日正午時点/NHKの報道による)。

政治や選挙に関心の薄かった層に、積極的な政治参画をもたらしたという点も、新たな展開だと思います。

今後は、予想された通り、国政進出もありとのことですが、業績や政策の中身、パフォーマンス的な面に関する批判もあるところ、実務経験や政策実現のブラッシュアップ等が求められていくと思います。

【蓮舫氏】

蓮舫氏は、春の衆院補選や静岡知事選で、立憲が得たはずの勢いが、出ませんでした。

衆院補選の分析(「衆院補選で示された『政治への怒りと諦め』…与野党ともに求められる変革」/2024年5月1日)でも述べましたが、春の衆院補選の立憲の勝利は、政党そのものへの支持というより、政権批判票の取り込みと、有権者受けする候補者の特性(有力政治家の世襲で、野党系・保守系両方の票が取れる(島根、長崎)、医療専門職で闘病経験のある爽やかな女性候補(東京))によるところも大きかったと思います。

立憲自体の政党支持率が大きく上がっていたわけではなかった、という冷静な受け止めと、批判ではなく、「都民が必要としていることはなにか」の分析が、もう少し必要であったかもしれません。

本来立憲の支持母体であるはずの連合東京は、今回小池氏に付き、また、陣営が期待していた(かつ数の多い)無党派層の得票率は2割に留まりました。街頭演説等でも共産党を強力に前面に押し出していましたが、それにより、陣営が狙っていた「岸田政権や小池都政の批判票」中の保守層の票が逃げ、共闘の結果「得た票」と「失った票」を比較すると微妙、というところではないかと思います。

今後の野党共闘の在り方を考えることにもなるでしょう。(なお本件は、有権者の投票行動の分析を試みたものであり、特定の政党や野党共闘の是非を論じる趣旨のものでは、もちろん全くありません)

【東京都議補選】

自民は都知事選では「勝ち馬に乗った」形にはなりましたが、同時に行われた東京都議9補選では、2勝6敗(1選挙区は候補者立てず)となり、欠員前の5議席から3議席減らしました。むしろ、この都議補選の結果が、今の状況を如実に表しているといえ、根強い政治不信は、今後の総裁選や国政選挙にも影響を与えると思います。

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東京都には、日本の人口の約1.1割、GDPの約2割が集中しています。都の税収は約6兆円で、この10年で1.5倍に増え、一般会計と特別会計を合わせた予算は約17兆円に上ります。財政が潤沢なため、各種の「バラマキ型」の施策も行いやすくなっています。

東京都に限った話ではありませんが、やはり経済自体が好転しないことには、真に「国民の生活」が良くなっていくことにはなりません。配るだけ配っても、成長がなければ、そこで止まってしまいます。未来への不安と閉塞感が漂う中、有権者受けの良い財政支出ばかりでなく、真に将来を見据えた責任ある政策を実現できるか、が大切になってくると思います。

今回の都知事選と都議補選の結果や有権者の投票行動は、今後の国政選挙での各党の戦略にも大きな影響を与えると思います。しかしながら、課題山積の都政・国政が、政局の観点からばかり動かされるのではなく、実際に、国と国民の生活がより良くなっていくための政治であってくれることを、切に願います。

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

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