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前脚が曲がって目ヤニだらけの子猫→母猫が人間に託して、元気になるまで半年も 動物はもう飼わないつもりが…保護猫活動のきっかけに

まいどなニュース 2024年7月25日 14時20分

 兵庫県西宮市の筈谷章子さん、河合敏恵さん、沢田啓子さんの3人は約10年の間、野良猫のTNR(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)や、手術後に飼ってくれる人を探す活動をしてきました。「3人でお金を出し合って20匹くらい手術したでしょうか。大変なこともありましたが、ご近所では野良猫をほとんど見なくなったので、やってよかったと思っています」(筈谷さん)

母猫が子猫をくわえて…

 活動を始めたのは1匹の猫がきっかけでした。2015年9月のこと。母猫と思われる猫が子猫をくわえてどこからか現れて、子猫を置いて立ち去ったそうです。

 「私が目撃したわけではないのですが、ご近所の方から聞いて外へ出てみると、子猫は自力で歩いてあるお宅の室外機の下へ。それを隣のご主人が引っ張り出してくれていました。その頃、2匹の子猫が外で遊ぶ姿を見ていたので、そのお母さんときょうだいだったのだと思います」(筈谷さん)

 置いていかれた子猫は両前脚が曲がっていて、目ヤニだらけで目を開けることもできなかったそう。日曜日で動物病院は休みだったため、筈谷さんが家に連れて帰り、ウェットフードを与えて翌日、病院を受診しました。

 「歯の状態からして生後3か月くらいだろうと言われました。でも体重は300グラムしかなく、寄生虫もいると。『この子が勝つか、寄生虫が勝つか』と言われる状態でしたが、とにかく食べさせて、半年お薬を飲ませて、ようやく勝ってくれたんです!」(筈谷さん)

 15年2月に愛犬を亡くし、「もう動物にかかわるのはやめよう」と思っていたという筈谷さん。「海外旅行にも行きたかったのでね」と笑いますが、生死の境をさまよっている子猫を放ってはおけません。なんとか生きてほしいと『生(せい)』と名付け、懸命にお世話した結果、生ちゃんは今も元気に生きてくれています。

 「あのまま放っていたら、確実に死んでいたと思います。カラスに食べられていたかもしれません。お母さん猫はそれが分かっていたから、『お願いします』と人間の前に置いて行ったのかなと」(筈谷さん)

 きっとそうに違いありません。一方で、筈谷さんら3人は母猫と生ちゃんのきょうだいと思われる子猫2匹も捕獲して、避妊・矯正手術をしました。それが活動のはじまり。ちょうどそのタイミングで、不要になった捕獲器を譲り受けたと言いますから、3人の前にもうレールは敷かれていたのかもしません。

地域の中で役割分担

 活動を始めると、助けが必要な猫を目にすることが増えました。筈谷家には生ちゃんの他にもう1匹、ナナちゃんという猫もいるのですが、その子は大きなゴミ箱の中に座っていたのを保護したそうです。「ひどい猫風邪を引いていて…。少し預かるつもりが、そのままうちの子になりました」。放っておけない性分なのでしょう。

 「元居た場所へ戻した猫にはごはんをあげて、最期まで面倒をみてくれている人がいます。地域の中で役割分担ができている感じですかね。私たちのところは頭数も少なかったからまだいいけれど、継続的に活動されている方たちには本当に頭が下がります」

 自費でTNRをし、地域の野良猫の数を確実に減らしていった筈谷さんたちに対しても、同じように頭を下げている人がいるはずです。

 さて、命のバトンがつながった生ちゃんはどのような暮らしをしているかというと…。

 「両前脚は曲がったままですが、すり足で歩けますし、階段も上がれるんですよ。一昨年の冬に痙攣を起こした以外は大きな病気もせず、元気に過ごしてくれています」(筈谷さん)

 生ちゃん、いいお名前もらったね!

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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