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トランプ銃撃事件にバイデン撤退で急展開 残り3カ月の米大統領選 トランプVSハリス「勝利後」の世界はどう変わる

まいどなニュース 2024年7月31日 20時0分

2024年最大の政治イベントまで残り3カ月となった。これまでのバイデンVSトランプの選挙戦では、両者の支持率は拮抗してきたが、高齢を露呈してきたバイデン大統領の方がやや劣勢だったと言えよう。そして、7月下旬、トランプ銃撃事件によって同氏が暴力には負けない政治家のイメージを強く印象づけたことで、民主党陣営はさらに劣勢に立たされた。しかし、バイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明し、後継候補としてカリマ・ハリス副大統領が名乗りを上げたことで、民主党陣営は劣勢の状況から抜け出したと言えよう。残りの3カ月、トランプVSハリスの構図で選挙戦が展開されていくことになった。現時点でどちらが勝つかは分からないが、それによって世界情勢はどうなっていくのだろうか。

まず、ハリス勝利のシナリオだが、それによって大きな変化が生じるとは考えにくい。大統領候補が副大統領候補を考える際、大統領候補は性格や理念、政策志向が合う人を選ぶことから、バイデン政権で副大統領を務めるハリス氏が、同政権4年間の政策から逸脱するような行動を取るとは考えにくい。ハリス政権は、中国との戦略的競争を最大の課題とし、先端テクノロジー分野での米国の優位性を確保するため、先端半導体など中国に対する輸出規制をいっそう強化することだろう。

また、ウクライナや台湾を民主主義と権威主義の戦いの最前線と位置付け、両国への軍事支援も積極的に継続することは間違いない。日本との間でも、ハリス政権は日本を最重要同盟国と位置付け、戦略物資の安定供給やサプライチェーンの強靭化など経済安全保障分野でもよりいっそうの協力を求めてくるだろう。

一方、トランプ勝利のシナリオとなれば、世界は変化を余儀なくされる。まず、最大の変化を余儀なくされる可能性があるのがウクライナだ。トランプ氏は24時間以内にウクライナ戦争を終わらせるなどと主張しているが、ロシア軍がウクライナ領土を占領する現状での和平実現の可能性を示唆し、ウクライナ支援の継続には難色を示している。第2次トランプ政権になってみないと分からない問題ではあるが、ウクライナはこれまでのような支援を受けることは難しくなるだろう。

また、それによって欧州はロシアに対する警戒を強めるとともに、米国への不信感も強めるだろう。トランプ氏は幾度もNATO軽視の発言を繰り返しており、トランプアメリカと欧州との間には再び大きな溝が生じることになる。

また、緊張が続く台湾情勢において、トランプ氏は「台湾が防衛費を支払うべきだ」「台湾が米国の半導体産業を奪った」などと発言しており、第2次トランプ政権では米国と台湾の間で亀裂が鮮明となり、それによって中国が台湾への軍事的圧力をいっそう強めることが考えられよう。一方、対中国では第1次政権で米中貿易摩擦が勃発したように、トランプ氏は中国への厳しい姿勢を貫くであろう。ここではハリスとトランプは共通している。

◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。

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