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釣った魚を地面に放置…マナーの悪い釣り客に地元の漁師ブチ切れ その胸に秘めた切なる願い「魅力ある霞ヶ浦を伝えたい」

まいどなニュース 2024年8月15日 12時10分

「2度と釣りすんじゃねーぞ」

茨城県かすみがうら市にて、漁業を営む麦わら村長さん(@mugiwara_mura)。地元・霞ヶ浦の釣り客に対する怒りを露わにした投稿が反響を呼びました。

無惨にも放置された魚の死骸。麦わら村長さんは思わず、この釣り客の方に強い口調で注意をしたといいます。この写真が公開されたX(旧Twitter)のリプ欄にも、怒りのコメントが続出しました。

「これはかわいそうだな」
「リリースしないならせめて食べようよ。それが命に対する礼儀やよ」
「ルールを守らない人が多いから釣り場がどんどん減っていきますよね」
「自然を愛する釣り師としてあるまじき行為です」

不法投棄や悪臭のリスク、霞ヶ浦のイメージダウンにも

麦わら村長さんは、これまでにもこのような場面を何度も見ているといいます。

近年、日本の湖や河川において、繁殖力の強い外来魚が増え、日本古来の魚の住処が圧迫されてしまう――という現象が起きています。霞ヶ浦も例外ではなく、近年では外来種が多くみられるようになったといいます。

釣り客が捨てていくのは、そのような外来種が多いそう。

しかし、外来魚であっても、むやみにその場に捨てて良いわけではありません。景観的にも良いものではありませんし、釣り上げた後で死んだ魚をそのままにして帰ったり、水中に投げ捨てたりすると、“不法投棄”とみなされ「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)違反」に問われる可能性もあります。

しかしながら、麦わら村長さんはこれまで、現場に魚の死骸だけが放置されている場面に、何度も遭遇しているとのこと。

なお、今回の投稿の釣り客は、「(死んだ魚は)湖に戻す」と言っていたといいます。麦わら村長さんが「ちゃんと持ち帰ってください」と注意し、その後同所を訪れたところ、魚はその場からはなくなっていましたが、本当に持ち帰ったのかどうかまでは分からないとのことです。

「漁業者として、このような場面を見るのは心苦しい」と、麦わら村長さんは語ります。いたずらに仕事場を汚されたことへの怒りは、想像に難くありません。

また、外来魚のなかにも、アメリカナマズなど食用にできるものはあります。そのような魚が、活用されずに干からびてしまうことに対する嘆きもあるといいます。

さらに、実質的な問題としても、魚の死骸が腐敗することにより“悪臭”が発生したり、鳥などが群がり通行人の妨げになったりするリスクもあります。

霞ヶ浦には観光やサイクリングの目的で多くの方が訪れます。そのような方々にも迷惑がかかってしまい、結果的に現地のイメージダウンにもつながってしまいます。

外来魚に対するルール・対処法もあるものの…浸透していない?

釣りを楽しむ人も、ルールやマナーはしっかりと守らなくてはいけません。

魚をその場に放置したりせず、最低限締めてからバケツやクーラーボックスに入れて持ち帰るなどの対策は必要でしょう。

また、最悪自宅に持ち帰れない場合であっても、釣った魚を生きたまま同じ場所に戻す、いわゆる“キャッチアンドリリース”は禁止されていません。

さらに、茨城県では、指定日に霞ヶ浦で捕った外来魚などを回収し、飼料や肥料などに利用する“釣り魚有効活用促進事業”を実施しています。魚を持参した方にはその重量に応じて、特産品をプレゼントするなどの特典も設けているといいます。

しかし、そういった自治体の方針や施策が、地域にきちんと伝わっていないというのも、このような問題が起こる原因の一つではないかと、麦わら村長さんは考えます。

ルールやマナーを守り、自治体の取り組みも積極的に利用するなどして、健全に釣りを楽しむ――釣り人たち各々が意識を高めることも大切ですが、自治体がより大々的に人々に呼びかけていく姿勢も必要かもしれません。

霞ヶ浦の魅力を皆に伝えたい

日本で2番目に大きな湖であり、長年漁場としても栄えてきた霞ヶ浦。かつてはうなぎ漁も盛んだったといいます。しかしながら、先述の通り外来魚が繁殖したことによって、ワカサギやシラウオ、コイといった魚の個体数が減少したり、漁師たちの高齢化が進んだりして、その活気が失われつつあります。

「生まれ育った霞ヶ浦の魅力を、今の人たちや観光客たちに伝えたい」

麦わら村長さんはそのような想いで霞ヶ浦を活性化させるためのさまざまな活動を行っています。観光客の方々がうなぎの漁や調理を体験できる施設・うなぎ村を運営。また、外来魚であるアメリカナマズをジャーキーにして無料配布するなどの活動も。

8月2日より、「アメリカナマズ食用化プロジェクト」と題し、外来魚の加工場をつくるためのクラウドファンディングも実施。外来魚の数を廃棄ではなく有効活用しながら減少させ、霞ヶ浦の生態系の安定を図るべく、さらなる活動の展開を目指します。

  ◇  ◇

霞ヶ浦が地元の方々はもちろんのこと、遠方から来た観光客たちにも、居心地の良い素晴らしい場所であるために――釣りをする時には、ルールやマナーを守りながら楽しむことが大切です。

今回、心ない釣り客に対し、大きな怒りを向けた麦わら村長さんですが、その胸の内には、霞ヶ浦への揺るぎない愛がありました。

Xなどへの投稿のほか、YouTubeにて「麦わら村長チャンネル」を開設し、霞ヶ浦の魅力について大々的に発信。今回の投稿に関する詳細も、動画にて公開しています。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))

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