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過酷な環境で生きる島の野良猫たちを一斉TNR 過剰繁殖を防ぐため、動物愛護団体が訴えるのは?

まいどなニュース 2024年8月22日 16時0分

 6月、瀬戸内海に浮かぶ坊勢島(兵庫県姫路市)で野良猫の一斉TNRが行われました。TNRとは、野良猫をT=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻すこと。過剰繁殖を防ぐ目的があります。手術を担当した猫の不妊去勢手術専門病院『スペイクリニック姫路』から依頼を受け、尼崎市を拠点に活動する動物愛護団体『つかねこ』が現地のボランティアさんなどと協力して、捕獲作業や子猫の保護などを行いました。

 3日間で捕獲できたのは、手術できなかった子猫も含め48頭。事前の調査では100頭近くいると見られていましたが、その中には飼い猫で、家の中と外を自由に行き来している猫も含まれていたのでしょう。一斉TNRの実施を知り、その間は外に出さなかったため捕獲数が減ってしまったのではないか、というのが関係者の見立てです。

「飼い猫が外に出ることで糞尿問題も起きますし、避妊・去勢手術できていなければ、その子たちから子どもが生まれてしまいます。外に出ることでケガをしたり、病気に感染したり、猫にとっても良くないので、坊勢島に限らず猫は完全室内飼育をお願いしたいですね」(つかねこ)

 捕獲された48頭の多くは、当初の予定通り不妊去勢手術を受け、今後は“地域猫”として島で生きていくことになりますが、一方で、そのまま保護された猫たちもいました。①健康状態が悪かった、②手術はできたものの保護が必要な月齢だった、③手術できない月齢だった……理由はさまざまです。

 ①の代表は「幸福丸くん」と名付けられた白黒猫。捕獲作業中、深夜に倉庫の中から猫の鳴き声が…。夜が明けるのを待って鍵を開けてもらったところ、やせ細った子猫が1匹、助けを求めて鳴いていました。お母さんやきょうだいとはぐれてしまったのでしょう。すぐに臨時診療所へ搬送され、適切な応急処置を受けた子猫は今、新しい家族との出会いを待っています。

 ②の理由で保護されたのは、シャム猫の「イリスくん」と黒猫の「ポーターくん」。島民が捕獲して臨時診療所に連れてきた子猫たちで、推定生後2か月でしたが、スペイクリニック姫路では5か月齢以下の猫に対する不妊去勢手術もしっかりとしたスキルの下、安全であると推奨しており、2匹にも施されました。イリスくんはつかねこの“看板猫”として飼育されることが決まり、ポーターくんは新しい家族を募集中です。

 そのほかの猫は③の理由で保護されましたが、発見されたときすでに息絶えていて、救えなかった命もありました。

「授乳中のお母さん猫と子猫たちがいたのですが、そのすぐそばに、亡くなっている子猫が1匹いました。その子に限らず、島の猫たちは総じて健康状態が悪く、ガリガリに痩せている子ばかり。病院もない島で、幸せとは程遠い状況でした。まだまだ課題は多いですが、“最初の一歩”のお手伝いができたことは良かったと思っています」(つかねこ)

 動物愛護団体などのこうした活動は日々、SNSを通じて発信されています。TNRの必要性や早期不妊去勢手術の安全性、保護猫たちの幸せに繋がる譲渡や支援に関する情報など、知ろうと思えばキャッチできる場所が今はたくさんあります。まずは「知ること」から始めてみませんか?

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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