手軽に始められる資産運用として、TVニュース番組などでも多く特集されているNISAとiDeCo。どちらも幅広い年代の人から注目を集めているものの、60歳になるまで資産の引き出しができないiDeCoよりも、自由なタイミングで資産引き出しが可能なNISAの方が選ばれることが多いそうです。
しかしiDeCoを運用していると認可保育園の保育料を安くできる可能性があり、子育て中の人にとってはiDeCoも注目するべきでしょう。そこで、なぜiDeCo運用と保育料が関係するのかや、どれくらい安くなるのかなどの疑問について、ファイナンシャルプランナーの祖父江さんに話を聞きました。
ーiDeCoを運用すると保育料が安くなるのですか?
そもそも認可保育園の保育料は、世帯所得の住民税の所得割額で決まります。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得割額を減らすことができ、その結果として保育料も安くなります。
ー所得割額はなにで確認できますか?
所得割額は、毎年6〜7月に郵送される「住民税決定通知書」に記載されている「所得割課税額」で確認できます。また、市区町村役場の窓口でも確認可能です。
ー実際、iDeCoを運用することで保育料はどの程度安くなるのでしょうか?
保育料は収入や控除額や自治体のルールによって異なります。またiDeCoの運用額によっても変動するため一概にはいえませんが、具体例として東京都北区在住の年収が500万円の夫と、年収360万円の妻の世帯で考えてみましょう。
人によって税額控除が異なるためおおよその金額ではありますが、まずはこの夫婦の所得割額を算出します。「(総所得−所得控除)×税率−税額控除」という計算式で算出した結果、夫の所得割額は約143,000円、妻の所得割額は約87,000円となり、合計の所得割額は約230,000円でした。
この所得割額を保育料基準額表で見ると階想区分D14の228,300円〜249,900円未満に該当します。つまり標準時間保育料は0〜2歳クラス第一子の場合32,500円です。
この世帯で夫婦それぞれが月額23,000円(年額276,000円)のiDeCoを運用すると、夫と妻のそれぞれが約16,500円の税額控除が受けられます。その結果、所得割額は約197,000円となり、標準時間保育料が29,200円に変更されます。つまり月々3,300円、年間で39,600円の保育料が安くなるのです。
なお、社会保険料控除や配偶控除によって、今回のケースと所得割額が異なる場合がありますので、ご注意ください。
ーiDeCoを運用するといつから保育料が変動しますか?
保育料は1年間で2回、4月と9月に見直されます。4月は一昨年の所得に基づく所得割額が、9月は昨年の所得に基づく所得割額が見直しの準拠となるのです。(例:2024年4〜8月までは2022年の所得、2024年9月〜2025年3月までは2023年の所得)iDeCoを始めてもすぐには反映されないため、なるべく早く始めることが重要です。
ーその他、保育料を意識したiDeCo運用について注意点などはありますか?
注意してほしいのは、iDeCoを運用したからといって必ずしも保育料が下がるわけではないということです。保育料は階層区分で決定されるため、所得割額が下がっても同じ階層区分内であれば保育料は変わりません。
例えば、東京都北区在住の所得割額340,000円の世帯がiDeCoの運用を開始し、所得割額が329,000円に下がったとします。しかし、340,000円も329,000円も同じD19の区分内であるため、保育料は変わらず40,000円のままです。
このようにせっかくiDeCoを運用しても、保育料に関してメリットが得られないことがあります。現状を把握し、どの程度運用すれば保育料に影響するのかを事前に計算しておきましょう。
また、所得控除は年末調整・確定申告で自分で申告する必要があります。iDeCoを利用した際には、申告を忘れないようにしてください。
◆祖父江優舞(そふえ・ゆうま)/ファイナンシャル・プランニング技能士 外資系金融機関勤務後、現在は保険代理店勤務。2024年度MDRT成績資格会員。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)