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救助犬が男性2名を発見!台風10号の被災現場に出動した「捜索救助犬」 公的な支援も補償もない民間ボランティア団体に頼る「災害大国・日本」の現実

まいどなニュース 2024年9月3日 7時0分

令和6年8月27日の夜22時頃、愛知県蒲郡市竹谷町にて、台風10号の大雨で土砂崩れが発生。家族5人が暮らす住宅1棟が巻き込まれる災害が発生した。

これを受け、愛知県豊橋市にて発足した捜索救助犬活動チーム「HDS K9(エイチディーエス ケーナイン)」が、蒲郡市役所危機管理課の要請によりメンバー5名、救助犬2頭と共に被災地に向けて出動。チームに所属する捜索救助犬、ベリジアン・シェパード・マリノアのオス、リッターくんと、ラブラドール・レトリーバーのオス、スーくんが行方不明だった男性2名の発見に貢献した。

「大雨の中がんばったね」

そんなつぶやきと共に、捜索救助犬 HDSK9_応援アカウント(@HDSK9_V)さんがX(旧Twitter)に投稿した、雨と泥で汚れたマリノアのリッターくんの誇らしげな様子に、多くの称賛と感謝のコメントが寄せられた。

「君たちがいたから、見つけてあげられた」

「ありがとうね!本当にありがとう!」
「君たちがいなかったら、探し出せなかった。ありがとう」
「人間以上に蒸し暑くて疲れたよね。本当に本当にお疲れ様でした」
「テレビを見ていたらリアルタイムで犬さまが写っていて、すごく胸を打たれました。土砂の中、夢中で探している姿、とても立派でした。ご苦労さま!君たちは素晴らしいです!ありがとう」

リッターくんとスーくんが所属する捜索救助犬活動チーム「HDS K9」は、2024年1月1日発生の「令和6年能登半島地震」の捜索救助にも出動。ドイツ語で「騎士」を意味する名前を持つリッターくんは、珠洲市内の倒壊現場でも行方不明者1名を発見している。

2頭が同じ場所で「アラート」→行方不明者2名を発見

「HDS K9」さんに伺ったところ、今回は「HDS K9」さんの方から蒲郡市に捜索救助を申し出たという。

「蒲郡市の承諾を得た後、8月28日の深夜1:50頃、現地に向けて出発しました。午前2時20分頃、蒲郡市役所に到着。午前3時10分頃、警察の先導で現場に到着。指示が出るまで待機した後、午前4時頃に捜索開始。マリノアのリッターとゴールデンのスーの2頭が同じ場所付近でアラート(※吠えて知らせること)したため、指揮本部に報告して待機。70代男性と30代男性の2名が発見・救助されました」(捜索救助犬「HDS K9」さん)

「HDS K9」のハンドラーさんと捜索救助犬が現地に到着する前に、被災現場から怪我をした女性3名が無事に発見・救助されたことから、現場では残り2名の行方を、救助隊の方々が懸命に捜索していた。そして、現場に到着したリッターくんとスーくんがほぼ同じ場所でアラートしたため、発見・救助が実現したという。

「残念ながら、今回はお亡くなりになられていた方2名の発見となりました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族さまには心よりお悔やみ申し上げます。ネットを通じてたくさんの方々に労いのお言葉やお気遣いをいただき、恐縮するとともに大変ありがたく思っております」(捜索救助犬「HDS K9」さん)

※「捜索救助犬とは」

「不特定な行方不明者を捜すように訓練をしている犬です。 捜す対象のニオイの元となる『原臭』は不要で、空気中に漂うわずかなヒトのニオイ(体臭、呼気や細胞片などのニオイとも言われます)を辿って捜します。 犬の優れた臭覚・聴覚を活かし、地震や台風などの自然災害により壊れた家屋の瓦礫に埋もれた人や狭隘(きょうあい)空間に閉じ込められた人・土砂に埋もれた人、道に迷ってしまった人など、救助を必要としている人を捜すことが可能です」(捜索救助犬「HDS K9」公式HPより)

「救助犬」に対する理解と協力を

災害大国日本において、被災地での行方不明者を捜索救助するために「災害救助犬」は欠かせない存在だ。

しかし現在、日本で活動する救助犬団体の多くは民間のボランティア団体であり、捜索救助犬「HDS K9」さんもそのひとつ。危険を伴う現場で捜索救助を行うハンドラーや犬たちの装備や燃料費などに対しても、国や自治体などの公的な支援や補償はない。

「ボランティアなので、仕事と両立させるのは厳しいのですが、自分たちでやれることがあるなら出来る限り活動を続けていきたいと思っております。また、私たちの活動によって全国の救助犬への理解が深まると嬉しいです」と、X(旧Twitter)に投稿していた捜索救助犬「HDS K9」さん。

「私たちのような民間の団体が捜索救助活動に携わることについては賛否両論あると思いますが、少しでも理解が得られると幸いです」(捜索救助犬「HDS K9」さん)

捜索救助犬に帯同し、日々共に訓練を重ねるハンドラーの多くは、その犬を誰よりも愛する飼い主や訓練士だ。家族の一員である犬たちの安全を第一に考えながら、ハンドラーたちは危険で過酷な捜索救助の現場で犬たちと行動を共にする。

「一般人として仕事をしながらの活動ですので、もどかしいと思う場面も多々ありますが、『できる時に・できることを・できる範囲で』活動しています。同じ目的で同じ方向を向き、何でも話し合っていけるような、捜索救助に携わるハンドラーと犬が増えてくれると嬉しいです」(捜索救助犬「HDS K9」さん)

「救助犬」と「ハンドラー」が安全に活動できる未来を

今回の土砂災害の現場では、マリノアのリッターくんとラブラドールのスーくんの他にも、ジャーマン・シェパードやゴールデンレトリバーら大型犬が捜索救助犬として活躍した。

だが、体重が軽く小柄な犬は狭い場所などに入りやすく、また、体高が高い大型犬に比べて鼻の位置も低いため、地面近くの臭気にも敏感に反応できることから、捜索救助犬として活躍する小型犬や中型犬も多い。

捜索救助犬の活動は日々の訓練の継続が重要だが、犬たちにとっては訓練も捜索救助も「ハンドラー(飼い主)と行う楽しいゲームのひとつ」。「楽しい」からこそ、犬たちは過酷な現場でも捜索活動が出来るのだという。

現在、捜索救助犬「HDS K9」さんでは、『令和6年愛知 蒲郡市土砂崩れ 捜索救助犬派遣』の活動支援を募るクラウドファンディングを実施している。

「人命捜索救助活動の維持継続のための資金に関しては、継続的なご支援をしてくださる企業スポンサーさんがいらっしゃることが理想です。資金のみでなく、捜索救助に関わる機材や衣服などのご支援をいただけると助かります。訓練をする場所をご提供いただけるのもありがたいです」(捜索救助犬「HDS K9」さん)

今回の蒲郡市での捜索救助の様子がテレビや新聞で報道されたこともあり、クラウドファンディング開始後、約5時間で当初の目標額「200000円」を達成したという。

「皆様の救助犬への多大なるご理解とご支援に感謝いたします。協議の結果、ネクストゴールを設けてチャレンジを続けることになりました」とXに投稿していた、捜索救助犬「HDS K9」さん。

災害大国として、「災害救助犬」の活動に対するさらなる理解と支援が求められる。

なぜ救助犬に「靴」を履かせないの?

被災地での救助犬の活躍が報道されるたび、「なぜ犬に靴を履かせないのか?」といった心配の声が多くあがる。言うまでもなく、世界中で誰よりも救助犬たちの安全を考えているのは、犬たちの飼い主でもあるハンドラーや訓練士自身だ。

では、なぜ多くの救助犬は、捜索救助の現場で、足を守るための「靴」を履いていないのか?

犬の素足にシンデレラフィットする「靴」の研究開発を!

もちろん救助犬は、「靴」を履く訓練も受けている。だが、犬の足裏のパッド(肉球)は運動時の衝撃を吸収し、バランスを取って体重を支えるスパイクのような役割を果たす。そのため、シリコンや布で出来た「靴」で肉球を覆ってしまうと、肉球と爪で地面をしっかり掴めず、滑落などの危険が生じるという。

また、肉球には多くの神経や血管があり、痛みや温度など、触った場所の情報を得るセンサーのような役割も持つ。

さらに、肉球は犬が唯一「汗」をかく器官だ。「靴」で肉球を覆ってしまうと体温調節が難しくなり、また、今回のような土砂災害現場のような状況では、泥などで足を取られた際に「靴」は容易に脱げてしまうという。

「バランス保持のためには素足での活動が望ましいのですが、災害現場には犬たちにとって危険な物が散乱しており、受傷する犬も少なくありません。もし素足のように犬の足にシンデレラフィットする活動靴があるなら、ぜひ活用したいと考えています。研究・開発してくださる企業さま、ご協力してくださる企業さまがいらっしゃいましたら、私どもまでご連絡いただけますと幸いです」(捜索救助犬「HDSK9」さん)

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)

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