都内のコールセンターで働くAさんは、始業時間から就業時間まで真面目に席に着き、働いていました。上司からの評価も高く、働き始めたころから時給も上がっており、高いモチベーションを持って仕事をこなしています。時折かかってくるクレームの電話にも丁寧に対応し、会社の顧客満足度向上に貢献していました。
ただ最近新しく入ってきたBさんの働きぶりを見て、Aさんはやる気がなくなっていました。というのもBさんは喫煙者で、1日の中でもっとも忙しい時間帯に決まって席を外し、たばこを吸いに行ってしまうのです。戻ってきたときの臭いが気になるうえに、たばこを吸いに行くと15分から20分戻ってこないこともあります。事務所の入っているビルの外に喫煙所があるため、時間がかかるのはわかりますが不公平さを感じずにはいられません。
それでもBさんはお客様からの評判が良く、上司はその点を高く評価していました。たばこを吸う離席で1日に30分位以上席にいないのに「評価が高いなんてずるい!」とAさんは考えています。たばこ休憩は労働時間として許されていいのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞いてみました。
ーたばこ休憩は労働時間とみなされるのでしょうか
これまでは労働時間としてみられてきましたが、近年では労働時間とみなすどころか就業時間内の禁煙を就業規則で明示する企業が増えています。この背景には喫煙者特有の匂いによるハラスメント「スメハラ」や、喫煙者に対する不公平感などが考えられます。
また以前は喫煙をしながら仕事ができたり、職場内に喫煙所があったりしたため、仕事への影響はまだ軽微でした。しかし職場から喫煙所がなくなり、たばこを吸うには離れた場所まで行かなければならなくなったため、喫煙=職場離脱と考えられるようになってきています。
ーそもそも労働時間とはどのように定義されるのでしょうか
何をもって労働時間とされるのかは、主として会社が定めます。例えば職場内に給茶機やフリードリンクの機械が設置されていた場合、この場所を使って会話をしたとしても労働時間としてみなされます。
もしこの場所を使用しても労働時間として認めないのであれば、会社は労働時間内にこの場所を開放しないようにする必要があります。どのような行為をすれば労働時間の対象から外れるかを、会社側は明示しなければなりません。
ー喫煙者の扱いは今後どのようになっていくのでしょうか
喫煙者の割合も減ってきているので、会社が労働時間内の禁煙を打ちだしても歓迎する人の方が増えている印象です。そのため就業時間内での禁煙はこれからも広がっていくと考えています。
一方で喫煙所だから生まれるコミュニケーションがあるのも認識されていて、代替手段を用意している企業も増えています。異なる組織や部署の人とも交流を持つ「インフォーマル組織」が、会社の雰囲気を良くして業務効率が上がるという声もあるからです。休憩所を設けたりフリーアドレスを導入して座席を固定しないといった取り組みで、風通しの良い環境を作ろうとしています。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)