日本人の海外移住は年々増加している。そんな中、注目されている移住先にフィリピンがある。英語が通用し、物価が安く、住環境も整い、投資アイテムもそろっているのが魅力。さらにシニア世代には60歳以上を対象とした割引制度も充実している。なぜいま、フィリピンが人気なのか。一般社団法人「海外移住協会」代表理事の岸本信子さんに聞いた。
経済成長も堅調なフィリピンは投資先としても期待大
外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2022年10月1日時点で生活拠点を日本から海外に移した「永住者」と在留期間が3カ月以上の「長期滞在者」は過去最高の約55万7000人に上っている。
日本での住みにくさを表しているとも言えるが、最も移住者が多いのはアメリカ。次いでオーストラリアなどのオセアニア地区。近年はアジアへの関心も高まり、特にフィリピンに注目する人が増えているそうだ。
その理由は観光ビザや学生ビザ、就労ビザ、永住権(特別移住退職者ビザ、クォータービザ、投資家ビザ、結婚永住ビザ)などが取得しやすく、日本から飛行機なら3時間程度で行け、時差も1時間ほどという点が挙げられる。
岸本代表は「特に永住権ビザが取得しやすいのが魅力。永住権を取得しても年間180日以上滞在する必要はなくて、なかには日本とフィリピンを行ったり来たりしている人も少なくないようです。物価は日本より安いうえに、公用語は英語。ほとんどのフィリピン人が英語を話せ、その英語力も高いので、英語をマスターするにもフィリピンはおすすめです」と話す。
さらに、資産運用・資産形成の株式会社「セレスティアルクリニック」の経営者という顔を持つ岸本さんは「人口が多く、国民の平均年齢は24歳と若い。政府の積極的なインフラ投資や、若年層および就業人口の増加が見込まれることから今後も持続的な成長が期待できると思います。私自身、かつての日本の高度成長期のような勢いを感じていて将来に期待がもてる国」といい「不動産や株式など、今後期待できる投資アイテムもフィリピンにはそろっている」と分析する。
同じ生活費なら日本より超優雅な生活が待っている?
フィリピンは7600以上の島からなる島国。リゾート地、セブ島でも知られる。どうしても「治安が悪い」というイメージがつきまとうが、岸本さんは「全てのエリアが治安が悪いというわけではありません。日本もそうですが、安心して住めるところも多い」と言う。
現在、約1万6千人の日本人が住んでおり、その7割以上がフィリピン島北部ルソン地方にまとまっている。また中部のビサヤ地方や中部のミンダナオ地方も比較的治安は良く、人気のエリアだ。
物価に関してはタイなど他のアジアと比べても安いといわれている。一般の人でも、日本では考えられないメイドさんや運転手さんを安くに雇うことができるそうだ。日本人が暮らす居住地ではプール付きコンドミニアムも多いそうで、それでも日本の賃貸マンションより家賃は安価だという。ちなみに、家賃は5万円ぐらいからある。
そして、フィリピンには60歳以上を対象とした「シニアシチズンシップ」という制度がある。フィリピン国籍を持っていなくても、特別移住退職者ビザ(SRRV)という永住ビザなど条件をクリアしていれば、レストランや薬局、スーパーなどで割引サービスを受けられる。「スーパーなどでは最大2割近い割引になるものもあります」
フィリピンに魅せられ、2024年にミセス観光大使に就任
そんな岸本さんがフィリピンにビジネスで通い出したのは9年前。2016年にはロドリゴ・ドゥテルテ元大統領就任100日記念の晩餐会に招かれ「フィリピンを応援したいという気持ちが強くなりました」と言う。そこで昨年12月には一般社団法人「海外移住協会」を立ち上げた。
「これまでいろいろな国に観光やビジネスで行きましたが、フィリピンは通えば通うほど、住みやすくていい国だと実感し、その魅力を移住という形でみなさまにお伝えしたくなりました。フィリピンはこれからもっと発展していく国。住むにも投資するにもおすすめの国です」
こう力説する岸本さんは、一連の活動が認められて、2024年には「フィリピンミセス観光大使」にも選ばれた。
「日本とフィリピンの橋渡しにもなるように、これからも頑張ります」と目を輝かせている。
◇一般社団法人「海外移住協会」
大阪市中央区南本町4丁目5−7東亜ビル1205A号室