「書店で本の上にバッグを置くのだけはやめてほしい。
注意して『どうして』と言われるのも悲しい」
X(旧Twitter)にて、書店での迷惑行為についてのポストが話題になっています。投稿をされたのは、小説家の酒本歩さん(@kanta04031818)。
そもそも、書店の本は売り物。商品に私物を置くこと自体、良くないことです。まして、本をこよなく愛する酒本さんにとっては、それは非常に心が痛む光景だといいます。
嘆かわしい思いを吐露された酒本さんに、今回の投稿にまつわる背景や、現在のお気持ちなどについて、詳しいお話をおうかがいしました。
大好きな本が粗末に扱われることが悲しい
書店を「癒しの空間」だと語る酒本さん。子供の頃から本が大好きで、現在も週に2回くらいのペースで書店を訪れるといいます。
ある日のこと、いつものように書店を訪れた際、信じられない光景を見てしまいました。
「中年くらいの女性が立ち読みをしながら、バッグを平積み台の本の上に置いていました。バッグが重かったのかもしれません」(酒本さん)
酒本さんは、その女性に注意しようかと思ったものの、ためらってしまいます。
というのも――。
以前にも、酒本さんは同様の場面を目撃したことがあったといいます。しかし、その人にそれとなく注意をしたところ「どうしていけないのか」と逆ギレされてしまい、その経験が軽いトラウマになってしまっていたそう。
酒本さんが迷っているうち、女性は立ち読みをやめて立ち去っていきました。
「大好きな本が粗末に扱われることが非常に悲しい、それに尽きます。どうしてそんなことをするのだろうと、信じられない思いでした。バッグの下にある本は、誰かが買うかもしれない商品だという、当たり前のことに思いを馳せてほしいと思います」(酒本さん)
本好きな人たちから怒りの声
そんな悲しみの気持ちをXに吐露した酒本さん。当該のポストには、たくさんの反響が。
「書店の本は商品。その上に私物を置くのは非常識と思います」
「書店の本の上って、言わばパン屋のパンの上にカバン置くようなものじゃないですか」
「バッグの底ってマナー的には靴の裏といっしょなんですよね…」
また、バッグを置くこと以外に、問題と感じた行為について言及する方も――。
「平積みの本に座って読んでる不届き者もいます」
「本の上にスタバのコールドドリンク置いている人がいたので、『商品の上に置くのはダメじゃないですか?』って注意したことあります」
「一度、子供が本の上に座ってるのを軽く注意したら、近くに居た親に『関係ないだろ』等キレられた」
「立ち読みの途中の本を広げたままで伏せて置くのもやめて欲しい」
「雨の日に濡れた傘を持って立ち読みとかもやめてほしいです」
「カップの飲み物持って歩いてるのも、ベビーカーの子供がおやつ食べてるのも、店舗内では遠慮するべきだと思います」
私物を置いたり座り込んだり――商品である本をぞんざいに扱う人に対しての怒りの声や、濡れた傘や食べ物・飲み物を持ち込むことに対する意見なども含め、リプ欄にはたくさんコメントが寄せられています。
「700人ほどから返信をもらいましたが、本好きの方がたくさんいて、思わぬ交流ができました。このポストがバズったことには驚きましたが、同じような思いの本好きな人の意見に安心しました」(酒本さん)
また、コメントのなかには、「本の上に置くなら檸檬にしてほしい」というものもあったといいます。これは梶井基次郎氏の名作『檸檬』のラストシーンをオマージュしたもの。コメントした人のおしゃれな感性に、酒本さんも「さすが!」と思われたそうです。
自分以外のことを思いやる気持ちも大切
さらに、リプ欄のなかには、レストランや飲食店のテーブルや椅子、電車の隣の席など、様々なシチュエーションについて言及された方もいました。
このように多方面に及んだXの反響を受け、酒本さんは語ります。
「(コメントのなかには)自分もやりそうだと汗が出たものもあります。自分もどこかで、非常識な振る舞いをしているかもしれないと思います」
確かに、ルールやマナーを守るのは社会で生きる上でとても大切なこと。ですが、「これはOK、ここからはNG」という厳密な線引きが難しいという一面もあり、あまりにそれを押しつけることは、争いの元にもなりかねません。
「それよりも、自分以外のものやことを思いやる気持ち、それが持てる余裕を大切にしようと思いました」(酒本さん)
互いに互いを思いやる――それぞれがそんな気持ちを持つことが、皆がより過ごしやすい社会につながるのかもしれませんね。
◇ ◇
小説家として活躍中の酒本さん。
新刊ミステリである『Gothic(ゴシック)』が、今年年末から来年年始頃に発売予定だそうです。
また、12月1日には、東京ビッグサイトにて開催される文学作品展示即売会「文学フリマ東京39」に参加予定。当日は、酒本さんを含む7名の小説家によって制作された小冊子『こうしてぼくらはデビューした』が販売され、そのなかで酒本さんは「受賞のためのギアチェンジ」というタイトルの文章を寄稿されているそうです。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))