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【衆院選2024】「政治とカネ」不信は払しょくされず 情勢調査から読み解く今後の日本

まいどなニュース 2024年10月21日 20時15分

衆院選は後半に入りました。各社の情勢調査データ等も踏まえ、深掘りしてみたいと思います。 

【ポイント】
・各党で明暗分かれる
・石破総裁VS野田代表
・非公認・比例重複認めない影響は
・山積する課題の解決は

各党で明暗分かれる 

各社の情勢調査では、おおよそ「自民は大幅に議席を減らし、単独過半数(233)は難しい。自公で過半数確保か、あるいはそれも割り込むか」、「立民は大幅増、国民・れいわに勢いがあり、公明、維新、共産は、現状維持か微減か」といった見込みになっています。

この背景には、「政治とカネ」を巡る国民の不信感がほとんど払しょくできていないこと、日本経済や国民生活が上向かない中で現状への不満が強くあること、総裁選で一定の期待が出ていたはずの石破総理の発言や姿勢がブレて、失望に変わったことなどが、見てとれるのではないかと思います。

10月の各社の世論調査の政党支持率(※1)と、前回衆院選の各政党の比例得票率(※2)を比較すると、今回の情勢調査における議席数に(ある程度)連動しているように見えます。 

「政党支持率は、自民党が断トツで高いのになぜ小選挙区で負けることがあるか」といえば、政党支持率は実際は地域によっても大きな差があること、さらに、どの地域でも「特定の支持政党なし」の割合は大きいので、やはり政権批判が強くなることで、自分や連立する政党の支持層の票を取り切れなくなること、そして、無党派層の支持が得られなくなること等が大きいだろうと思います。 

(※1)政党支持率(2024年10月の各社世論調査(NHK、時事、毎日、読売、産経、日経)) 
調査によって相当差がありますが、自民19~35%、立民5~14%、維新3~5%、公明3~4%、共産1.5~5%、国民1.1~3%、れいわ1.4~2%、社民0.3~1.2%、参政0.4~1.2%、そして、「支持政党なし」が25~62%。  
(※2)前回衆院選(2021年)の各政党の比例得票率 
自民35%、立民20%、維新14%、公明12%、共産7.3%、国民4.5%、れいわ3.9%、社民1.8% 

また実は、こういった情勢調査のデータが、実際の有権者の投票行動に影響を与える可能性も指摘されるところであり、今回のようなケースだと「迷っていたけど、勢いがあると言われている方に入れよう」という傾向に拍車をかけているのではとも思います。(社によって調査手法の違いはありますが)序盤の調査よりも中盤の調査で、与党により厳しい結果が見られることにも、それが表れているように思います。

石破総裁VS野田代表 

石破内閣の支持率は、28~46%と調査によって幅がありますが、各選挙区の情勢を見ても、与党に対する新政権発足の「ご祝儀相場」の雰囲気はほぼありません。

実直で器用ではない石破総理の“発言のブレ”は、「党内野党だったときは、言いたい放題言えたが、実際に総理総裁になると、現実の政策や各国との外交関係、実際の党運営等との乖離が大きく、軌道修正せざるを得なくなった」ということで、これは一般的に、政権交代で野党が政権を取った時にも、同様のことが起こります。 

国民の目から見ると、「なんだ、石破氏で変わると思ったが、結局古い自民党のままか」といった失望・裏切られた感があるのではないかと思います。また、党内に亀裂を生じさせていることは間違いないので、選挙後の党内運営も円滑にはいかないことが予想されます。

新たに立民の代表になった野田氏は、討論等でも安定感を出し、立民の中では保守寄りの主張で、穏健保守の一部や自民批判票の受け皿になっています。 

ただもちろん、どんな論戦においても「批判される側(与党)より、する側(野党)の方が有利で良く見える」のは当然で、本質的に立民が「2009年の政権交代時の民主党の政権運営の失敗から、なにが変わったのか」という点と、そして個々の選挙区においては、有権者が「『この政党だったら誰でもよい』ではなく、『候補者の資質や経験で見る』」ということも重要だろうと思います。

非公認・比例重複認めない影響は 

政治資金規正報告書に不記載があった議員で、今回の衆院選に出馬するのは45名(①離党し、参院からの鞍替えで無所属で出馬1名、②非公認(または比例単独認められず)、無所属で出馬11名、③公認だが、比例重複は認められない33名)です。

このうち、前回(2021年)の衆院選において、小選挙区で当選33名、小選挙区で落選して比例復活8名、小選挙区・比例復活とも無し1名、当時参院議員2名、新人1名、となっています。

非公認の場合(11名)、公認料が出ない、供託金(300万円)が自己負担、ビラやポスターの数が少ないといったデメリットがありますが、何より大きいのは、比例復活ができないことと、党の地方議員や地域支部、各職域団体などが支援に動いてくれない可能性があることです。

ただ今回は、公示直前の決定であったことや、自民党が刺客候補を立てないこと、当選したら追加公認が見込まれることなどから、党組織や団体が揃ってそっぽを向くということにはなっていないようですが、ベテランか中堅・若手かでも度合いは分かれると思います。「党ではなく人」で応援してくれる人がどれくらいいるかも重要です。

また、公認でも重複立候補無しの場合(33名)、小選挙区で得票トップにならないと、比例復活ができず落選、ということになり、今回の自民党への逆風も考えれば、厳しい状況にある候補者は多いと思います。

なお、「比例復活を認めないことで、自民党の議席が減る」というのは実は誤解で、「小選挙区で落選した候補者が、比例復活するはずだった分の議席」は、代わりに「その地域ブロックの比例単独の候補者が、当選していく」ので、党が取れる議席数は、その意味においては変わりません。

ただ、国民の側からすれば、地域(各選挙区)とは関係の無い、急場しのぎの“数合わせの比例単独候補”(念のため名簿に載せられる「党の地方支部の職員」等)が議員になる、といった問題も生じ得ます。 

また今回の方針は、結果的に、旧安倍派の議員を減らし、石破総裁の下で当選する新人議員を増やすことにつながる可能性もあります。政治というのは、与野党間の争いであるとともに、同じ党内のどろどろした権力闘争のおそろしさも、改めて感じるところです。

山積する課題の解決は 

今回の衆院選では、“政治とカネ”が大きくクローズアップされます(もちろん公正でクリーンな政治の実現はものすごく重要です)が、国民の生命や生活に大きな影響のある優先度の高い課題というのは、他にもたくさんあります。

中国・ロシア・北朝鮮の動向、30年間上がらない賃金、物価高、円安、雇用問題、衰退する地方、食糧・エネルギー問題、教育・研究開発力の低下・・・。若者は未来に希望が持てず、中高年は時代の変化に戸惑い、高齢者は孤独と不安の中にある。日本が世界の先を行く人口減少・少子高齢化を前提に、どうやって活力ある社会を実現するか、世代間の対立を煽るのではなく、すべての方が、安心して希望を持てる社会を作るか、正念場だと思います。

選挙のときは、バラマキ、減税、補助金・・耳に聞こえの良い言葉が溢れます。与野党問わず、「公約」は、言うだけならなんでも言えるし、言った者勝ち、後は知らない、のようなところが、(残念ながら)あると思います。だからこそ、大事なのは、国と国民の利益に資する結果がきちんと出たか、うまくいかなかったとしたら、その理由は何で、それを次に生かせるか、国民もメディアも、引き続き、ウォッチし評価し続けていくことだと思います。

そしてまた、国民一人ひとりも、“お客様”ではなく、より良い国をともに作っていく“同志”だと、私は思います。「国の方向性を決めるために一票を投じる」という意味だけではなく、どうやって国を守るか、どうやって国の経済や教育や社会保障を維持向上させていくか、財源をどう確保するのか、国民一人ひとりの思慮と行動がますます大切になってくると思います。

「国民が政治を嘲笑しているあいだは、嘲笑い値する政治しか行なわれない」(松下幸之助氏)
「国があなたのため に何ができるかではなく、あなたが国のために何ができるのかを問うてほしい」(J.F.ケネディ米大統領)

日本がより良き国に向かっていきますように。 

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

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