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身長123センチ…低身長の“現役女子大生モデル”が、「明るい日常」を発信する理由 10万人に1人の希少疾患『2型コラーゲン異常症』と生きる日々

まいどなニュース 2024年10月23日 19時32分

軟骨や硝子体、耳の内部(内耳)を形成する“2型コラーゲン”という遺伝子の変異により、低身長や関節の変形、難聴など様々な症状が現れる「2型コラーゲン異常症」は希少疾患。

123センチの超低身長大学生モデルとして活躍する星来さん(@seira_123cm)は、SNSなどで日常を発信。等身大の姿を見せ、障がいの周知に取り組む。

「2型コラーゲン異常症」の確定診断に時間がかかった

2型コラーゲン異常症は、症状や重症度に大きな個人差がある。患者数は10万人に1人ほどと少なく、難病指定されていないため当事者は公的な支援を十分に受けられていない。

星来さんは胎児の頃、大腿骨が短いことが分かったが、病名はなかなか明らかにならず。出産後、母親はさまざまな病院へ足を運んだ。

ようやく病名が分かったのは、星来さんが2歳の頃。ただし、確定診断に至ったのは中学生の頃だった。

「医学が進歩し、数mlの血液で疾患名を判断できるようになったんです。検査を受けて、正式に2型コラーゲン異常症であると診断されました」

星来さんには低身長以外に、背骨が曲がって弓状になる「側弯症」も見られたそう。症状の進行を遅らせるため、コルセットを装着したが、小学6年生の頃、背骨が74度まで湾曲。そこで背骨に沿って金属の棒を入れる手術を受け、20度前後まで矯正することができた。

加えて、中学生の頃には膝が内側に湾曲したような形になるX脚を治療する手術も受けたという。

2型コラーゲン異常症は、現代の医学では根治が難しい。そのため、星来さんは対処療法で疾患と上手く付き合っている。

現在は、整形外科や専門医のもとへ年1回、通院。遺伝子検査によって網膜剥離になる可能性が高いことが分かったため、年に2回以上は眼科で精密検査を受けてもいる。

「最近は股関節の調子が悪くなってきているので、将来的には人工股関節を入れることも視野に入れています」

障がい者専門の芸能事務所を知って生き方が変化

現在、所属している障がい者専門の芸能事務所「アクセシビューティーマネジメント」の存在を知ったのは、高校3年生の秋。

SNSで偶然、所属モデルの活動を見た時、星来さんは障がいを持つ人が多くの人に向けて自分の姿や考えを発信する姿に衝撃を受けた。

「それは私が無意識のうちに、この体ではできない…と決めつけていたことだったからです」

私も、多くの人に障がいを身近に感じてもらえる活動がしたい。そう思い、大学受験後、「アクセシビューティーマネジメント」が運営する芸能スクールへ。半年後、所属のためのオーディションを受け、合格となった。

モデルとなった星来さんは障がいを身近に感じてもらえるよう、SNSやTiktokで自身の障がいをあえて気軽に発信。

「周囲の友達は、障がいがある部分以外は私が普通の大学生であると知っているので、普段は他の友達と同じように接してくれます。でも、社会には障がいがある人への接し方が分からない、障がい者は一方的に助けてあげなければならない存在と感じている人も、まだ多いように思う。健常者と障がい者の間にある壁をなくしたいんです」

明るく日常を発信し続ける星来さんのもとには、「生き方を見て勇気づけられた」との声が届くことも多い。

「私は子どもの頃から、障がいがある人を勇気づけたいとも思ってきました。障がいがあるからこそ達成したい夢があり、希望を届けたい人がいるんです」

「障がいは強み」と思えるようになった母の優しさ

私の障がいは個性であり、強み。星来さんがそう思えるのは、母親の優しい教えも深く関係している。母親はアリなどの小さな生き物を見つけると、「小さくてかわいい」と言い、「小さい=かわいい」と星来さんが思えるように工夫してくれた。

また、母親は誰かに会った時、「障がいがあって小さいですが…」とあえて星来さんの障がいを説明したそう。そのため、星来さんは「小さいことは悪いことや恥ずかしいことではなく、隠す必要などない」と思えるようになった。

星来さんは2型コラーゲン異常症の患者会の本部委員でもある。オンラインで当事者に情報を発信したり、医療関係者向けの講演会でスピーチをしたりと、障がいの周知に取り組みながら当事者の孤独感を和らげているのだ。

「私自身、患者会に入るまで同じ疾患の方に出会ったことがなくて孤独を感じていたので、患者やその家族が繋がりを持てる活動をしています」

障がいがあってもひとりの人間。ひとりひとりの目線に立って話を聞き、相手を理解しようとした上で何か必要なことがあれば、サポートをしてもらえたら嬉しい。そう話す星来さんは健常者と障がい者の架け橋だ。

前向きな女子大生も悩む“就労の壁”

そんな星来さんが今、不安に思っているのは就労の問題。大学で学んでいる医療保育や幼児教育の知識を活かして、一般企業で働きたい。そう思ってはいるが、障がい者に対する環境整備の取り組み状況は企業によってさまざまであるため、やりたいことと職場環境の両方が満たされる企業に巡り合えるのだろうかと悩む。

最近では保育実習の依頼をした際、園から「合理的配慮が必要である」という理由で断られ、歯がゆさを感じた。

「もちろん、何かあった時に責任の所在が難しかったり、他の学生と比べるとできることが少なかったりするなど、様々な理由はあったと思います。ただ、私の姿を見る前のご判断だったので、もう少しご検討いただけたらと感じました。大学の先生は私でも実習ができると感じて依頼をしてくださったので、私と話し合った上で詳しい理由の説明と共にご判断いただきたかったです」

そうした経験をすると、「違いを認めて本当の意味で共生できる社会を作りたい」という気持ちは、より大きくなる。

「今後は、テレビや講演会で経験や考えを発信したいです。雑誌やCM、ファッションショーでは低身長でもおしゃれを楽しめることを伝えたいです」

そう意欲を燃やす星来さんは医療や福祉、教育、保育などを専門的に学んでいる人や実際に現場で働いている方と当事者目線で話がしたいとも思っている。

「そうすることで、未来を生きる障がい者がより幸せな日常を送れたり、子どもたちが自然に多様性を受け入れられるようになったりするのではないかと考えています」

自身の生き方や日常を見せ、社会が丸くなることを願う大学生。その想いを受け止める企業や大人が増えることを願う。

(まいどなニュース特約・古川 諭香)

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