街開きからおよそ半世紀がたち、高齢化が深刻化している大津市北部の大規模住宅地「びわ湖ローズタウン」で、地元・向陽町の有志が「住民見守り隊」の活動に力を入れている。日ごろから声かけなどを通じて高齢者らを見守り、顔の見える関係を築いた上で、大規模災害に備えた個別避難計画づくりも進める。隊員は「住民同士が支えあって暮らす町を目指し、ゆくゆくは他の地域にも取り組みを広げたい」と力を込める。
びわ湖ローズタウンがある真野北学区の8町では、住民が生活の中で無理なく続けられる支え合い活動の検討を進めている。向陽町が先行して取り組むことを決め、2022年に隊を結成した。現在は隊員15人が地域を巡回して声かけをしたり、住民の困りごとに耳を傾けたりしている。
向陽町は独居の高齢者や移動手段に困っている住民も多いことから、特に大きな課題となっているのが災害時の避難という。見守り隊では、地震の際などに自力で避難できない人を守ろうと、要支援者の個別避難計画づくりも進めている。
また、災害時の安否確認に使うオレンジ色のタスキも独自に制作し、7月には約160戸に全戸配布した。有事の際には、住民が自らの無事を知らせるため、玄関ドアにつるして使用するという。
増える空き家 路線バスも減便
JR湖西線の小野駅(大津市湖青1丁目)を降り立ち、ゆるやかな坂道を歩いて数分。閑静な住宅地の向陽町は、1974年の湖西線開通に合わせて開かれた約5千戸の大規模住宅地「びわ湖ローズタウン」の中でも、いち早く入居が始まった一画だ。京都や大阪の子育て世帯などが一斉に移り住んできてから半世紀がたち、近年は住民の高齢化が深刻化している。
2023年時点では、65歳以上の高齢者は町内の人口の約42%を占め、大津市平均の約27%を大きく上回った。高齢者施設への入所や入院で家を離れる人が相次ぐほか、交通利便性の高い地域に移り住む人も少なくない。住民の女性は「近隣の家はほとんど空き家になってしまった」とつぶやく。
見守り隊として活動する男性(72)は「かつては子どもがたくさんいる町だったが、今は本当に静かな場所。転勤で20年ほど町を離れ、戻ってきたときにはあまりの変貌に驚いた」と振り返る。さらに今春には、ローズタウンを通る路線バスが運転士不足の影響で減便となるなど、高齢者の交通手段の確保も大きな課題としてのしかかる。
見守り隊では住民と交流する催しも開くなど「顔の見える関係」を築く活動にも力を入れる。隊員らは「さらなる高齢化も見据え、地域力を高めていかなければ」と決意を込めた。
(まいどなニュース/京都新聞)