京都市内の同じ学校に通う17歳の女子高生3人組のロックバンドが9月、CDデビューを果たした。
バンド名は「丸竹夷(マルタケエビス)」。
碁盤の目にたとえられる京都市中心部の通り名を丸太町通から南に向かって順に並べた京都のわらべ歌にちなむ。
京都発、世界そして宇宙へ羽ばたく—。
壮大な夢を掲げる丸竹夷は昨年11月に結成したばかりで、キャリアは浅い。そんな彼女たちがデビューのきっかけをつかんだのは、ある動画の投稿だった。
メンバーは、ボーカル・ギターの姫花(ひめか)さん、ベースの莉音(りおん)さん、ドラムの紅留美(くるみ)さんの3人。
姫花さんは小さい頃から母や兄の影響で1980年代に爆発的な人気を誇った伝説のロックバンド「BOØWY(ボウイ)」の曲を聴いていた。BOØWYのギタリストだった布袋寅泰さんが吉川晃司さんと結成した「COMPLEX」のヒット曲「BE MY BABY」のミュージックビデオ(MV)をモチーフにした短い動画を、3月に作った。
学校の廊下とおぼしき場所で制服姿の3人が楽器を持って、布袋さんや吉川さんばりの派手なステップを踏むインパクト抜群の動画に仕上げた。「廊下でBE MY BABYやったら停学になりかけたバンド」のツイートを添えてX(旧ツイッター)で配信した。
するとこれが「大バズり」。1.6万リポスト、9万以上の「いいね」、インプレッション(表示回数)は1千万回を超えた。
SNSで拡散されたこの動画に、なんと布袋さん本人が反応。自身のXで「可愛いね!」とコメントしてくれた。反響は大きく、音楽業界の関係者から声がかかるようになったという。
リーダーの姫花さんは「BE MY BABYの元ネタの動画をJK(女子高生)がまねてやったら絶対バズると思って。大人に注目してもらいたくてやりました。計算通りです」といたずらっぽく笑う。
3人は京都生まれの京都育ちで、京都市内に住む。高校2年生だった昨年の秋、軽音楽部に入っていた姫花さんとベースの莉音さんが、クラスメートの紅留美さんをドラムに誘い、結成した。
姫花さんの兄が音楽関係の仕事をしていることもあり、最初からプロデビューを目指して活動をスタートした。平日は放課後に学校近くのスタジオを借りて練習し、週末になると京都府内の山村にある一軒家を改装した専用スタジオで合宿をして腕を磨く。
オリジナル曲の制作に励み、関西一円のコンサートや野外ライブに精力的に出演している。SNSを活用した発信を続け、バンド結成から1年も経たない9月20日にデビューシングルをリリースした。
曲のタイトルは「はむはむGX(ギャラクシー)」。疾走感と爽快感にあふれたロックチューンで、17歳の等身大の悩みや弱音を吐きつつもユーモアとポジティブな未来へのメッセージを歌詞で表現した。
作曲した姫花さんは「私たちの名刺代わりの1曲」と自信を込め、作詞した莉音さんは「私たちの生活をもとに同世代の子たちに勇気を与える応援歌にしたかった」と思いを語る。
MVは「京都」にこだわり、四条大橋や出町柳、萬福寺(宇治市)などで撮影。着物を現代風にリメークしたコスチュームで演奏するシーンをふんだんに盛り込んだ。
デビュー曲を発表した後、3人が通っている高校の文化祭でのライブを動画で配信したところ、再び布袋さんからXで反応があり、「かっこいいね!」のコメントが付いた。
この1年で起きた急激な身の回りの変化に「急すぎる展開」(莉音さん)、「びっくりしている」(紅留美さん)と戸惑いを隠せないメンバーたち。12月にはデビューシングルを引っさげたライブツアーを京都と東京で行う予定だ。
来春の高校卒業後は、大学に進学せずバンド活動一本で勝負する。ボーカル・ギターの姫花さんは「憧れの布袋さん、B’zの(ギタリスト)松本孝弘さんに会いたい。布袋さんと一緒に『BE MY BABY』を東京ドームで歌いたい」と夢を膨らませる。
デビュー曲の「はむはむGX」の一節にこんな歌詞がある。
♪夢を貫け 時代をつくれ うちらの覚悟を 見とけ
京都発女子高生バンドの夢は奇想天外で、ライブ会場として「京都にピンク色のハート型のドーム」をつくることだという。
「計画も練ってあって。(米国の富豪)イーロン・マスクと仲良くなってお金を出してもらう。ワンチャン(ひょっとしたら)夢ある」と姫花さんが屈託なく話すと、莉音さんと紅留美さんも笑顔でうなずいた。
デビュー曲の「はむはむGX」は、丸竹夷の公式ユーチューブなどで配信中。シングルCD(100円)はタワーレコードの京都店や渋谷店などで取り扱っている。
(まいどなニュース/京都新聞・国貞 仁志)