今や日本のトイレは世界最先端と言っても過言ではないですが、ザコ設備【公式】敗北を知りたい設備屋さん(@zaCoSETSU、以下ザコ設備さん)が、トイレリフォームの依頼を受けて訪れた家でのやりとりをXに投稿すると、多くのX民(旧Twitter)がざわつく騒ぎに。
お客さん「ボットン便所を簡易水洗にしたいです…」
ワシ「どれどれ……えぇ…………こ、これはあの…そのままどこかに寄贈されたほうが………珍品どころの騒ぎではないですよ…」
かなり古いと思われる日本家屋の扉を開けると、和式トイレが鎮座。しかも一般的に見かける和式トイレとは全然違います!ザコ設備さんが「これはすごい」とつぶやいたのも納得。かなり古そうなトイレです。
「骨董市で出した事があります。でも現役は初めて見ました」
「博物館クラスですね」
「時代劇の世界やん」
「博物館でみたことあるやつ」
「おぉ!コレはコレは!この厠・便器の造りからして、かなりの古さ年代物ですなぁ〜」
「ゴールデンカムイで見たお便器だわ!!(庶民は木の便器)」
「便器博物館行きにw」
「これは貴重!!建物ごと保存した方がいいレベル」
コメント欄を見ると、歴史的トイレの登場で皆さん大盛り上がりな様子が伺えます。このトイレについての詳細をザコ設備さんに伺ってみました。
築130年以上の古民家のトイレ
ーー話題となったくみ取り式便所の便器はどんな家にあったのですか?
「築130年以上のお宅にありました。こういうトイレは資料として見た事はありましたが、実際に目にしたのは初めてでした」
ーー今回の依頼通りにこのトイレを簡易水洗にすることは可能でしょうか?
「技術的には可能ですが、場合によっては建屋の大幅な解体を含む場合があるので、状況に応じて判断します。もし工事するとなると、今あるトイレブースを解体し、下にあるであろう便を溜める甕を撤去、建屋外に新たに便槽を設置した後に床下を汚水配管した後に床を張り替えし、便器を新たに取り付けます」
ーー「貴重品では」という意見もありましたが、便器を保存することは可能ですか?
「この厠自体が母屋とは別棟になっているため、このままの状況を保存しながら移築する場合は建屋から解体し移築することになるので相当な費用が掛かると予想されます。でも、便器だけを保存するのであれば取り外しは容易です」
便器だけで保存をすることも可能とのことですが、実際にこのトイレ、本当に貴重なものなのでしょうか?!その辺りについて、INAXライブミュージアムの担当者にもお話を伺ってみました。
100年以上前の便器、名前も判明!
ーーこのトイレはいつ頃のものか、判別可能ですか?
「写真を見る限り、『染付花鳥図(牡丹に雀)角形大便器』だと思います。生産時代は明治時代後期~昭和時代前期で、愛知・瀬戸で作られていた陶器製便器です」
ーーこのタイプのトイレは一般的に普及していたものですか?
「当館には多数収蔵されていることから、この絵柄は大量生産品で(出始めの物ではなく)、 普及していたものと考えられます」
ーー量産品とはいえ、美しいですね
「同じ絵柄で、形の異なる大小便器も作られていたんです。ちなみに、便器については当館公式WEBサイトでも昔のトイレについて解説し、一部のコレクションをデータベース上で公開しています。INAXミュージアムブックより『染付古便器の粋──清らかさの考察』という本も出版されておりますので、こちらをご覧いただくとさらに詳しいことがわかるかと」
投稿された便器は、この家の築年数が130年以上ということですから、1890年代半ばの品と考えられそうです。
INAXが愛知・常滑で運営する、土とやきものの魅力を伝える文化施設『INAXライブミュージアム』の中に、日本のトイレ文化を発信する展示館『トイレの文化館』が新たに登場。2025年4月17日(木)から一般公開の予定なんだそう。
「木製便器の時代から、今回Xへの投稿で注目された華やかな装飾の陶磁器製便器、やがて水洗化を経て和魂洋才の技術的な発展と空間としての充実を遂げた現代のトイレに至る歩みを、約50点の実物展示と豊富な資料展示でたどることができる内容になる予定です」とのこと。『INAXライブミュージアム』はさまざまなワークショップも開催しているので、そちらと一緒に楽しむのもおすすめです。
そして気になる便器の行方を、ザコ設備さんに伺うと「あの後、ご家族を交えてお話をさせてもらい、とにかく貴重な物という説明の後に工事金額自体もかなり高額になるという説明をさせてもらいまして、現在は一旦保留という形で収まっております」とのこと。
ウンを天に任せて、何か良い解決策が見つかるといいですね。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・東寺 月子)