「とりあえずで仮予約をオンラインからされてキャンセル料かかるギリギリでキャンセルとかが頻発してました」。宴会シーズン間近の今、身勝手なキャンセルに悩まされていた飲食店が打ち出した対応策が、Threadsで話題に。
自分本位な予約やキャンセルとの「攻防戦」に悩まされなくなった”秘策”を教えてもらいました。
名古屋で現在3店舗展開するオイスターバー「カキノミ ~牡蠣のお店~」(@kaki_nomi_nishiki3、以下、カキノミ)では、1ヶ月先までの予約枠を解放するなか、予約をしてはキャンセルする人が続出していました。
飲食店の予約にまつわるトラブルとしては、予約した時間になっても来ない「無断キャンセル」が以前から問題になっています。事前にキャンセルしているので大きな損害はないのでは? と思ってしまいそうですが、「本当に来る予定で予約を取りたい方が取れないという状況」になっていたとのこと。
事前キャンセルを防止するために…
そんな状況を改善すべく、「カキノミ」では予約し、キャンセルした場合、1秒後でも500円のキャンセル料がかかる設定に変更。それによりキャンセルそのものが激減し、「仮に予約を入れまくったり変更したり」といったお店を振り回す行為をする人もいなくなったそう。
この対策に、「すごく良いですね」「良い案ですね、旅行サイトにも取り入れて欲しいと切に願う予約担当者です」と「カキノミ」の解決方法を評価する声のほか、全額のキャンセル料ではなく「500円なら助かります…」と予約するお客さん目線の意見も。
実際、お客さんからの反応はどうなのか、予約・キャンセルに関する困りごとはすべて解消したのか。「カキノミ」を運営する株式会社バリューコネクションの代表、鬼頭さんに取材しました。
キャンセルは「月に100件程度」
鬼頭さんによると、「カキノミ」はもともと、「食べログ」からの予約とお店への電話予約、2つの方法で予約を取っていたと言います。「この時点での事前キャンセル、当日キャンセル、無断キャンセル全てで月に100件程度です。週末にはかならず1、2件は無断キャンセルが発生するレベルでした」(※栄4丁目店、錦店の合計。10月29日オープンの納谷橋店は含まず)。
キャンセルの件数が多く、さらに飲食店にとって大事な週末の営業にも影響している状況を打開するため、鬼頭さんは予約システムを見直し、「TableCheck(テーブルチェック)」という飲食店オンライン予約サービスシステムを導入。
「これによりキャンセルが激減。月30件程度で当日無断キャンセルは月に1、2件にとどまり、ほぼない状況になりました。テーブルチェックは予約時にクレジットカードの登録が必須のためキャンセル料を不正に免れることができなくなったためです」
しかし、新たな問題が…テーブルチェックの最初の設定が、予約した日時の48時間前からキャンセル料がかかるようになっていたため、「まだ予定が固まっていないお客様からの『とりあえず仮予約』といった感じの予約が頻発し、ぎりぎり48時間前のところでキャンセルという案件が増加しました」と、事前キャンセルが続出する状況となったのです。
そこで、「本当にご来店されたいお客様からのご予約が取りにくいという状況」を改善すべく、利用者側のキャンセルや予約変更に制約のあるLCC(格安航空会社)を参考に、予約後すぐのキャンセルでも500円のキャンセル料がかかる設定に変更しました。
最近の変更のためデータはないものの、「あきらかに不要な予約が減りました」と効果を実感し、お客さんからも「予約が取りやすくなったからよかった」と好評だといいます。
「キャンセル自体が悪ではないのですが…」
鬼頭さんは、「キャンセル料金とは契約の一方的な破棄により相手側が被る損害を補償補填するために存在していると考えており、飲食店側に損害が生じた時点で事情は関係ないのでは?という思いです。キャンセル自体が悪であるとは一切考えておりません。致し方のない事情がある場合もあります。しかしキャンセル料を払いたくないからあの手この手で免れようとすることは悪ではないでしょうか」と、新たな問題を指摘します。
「とりあえず仮予約」からのキャンセルに困らされることは少なくなったものの「キャンセル料の免除やなんとかしてもらおうとする電話がピークタイムにあり人的コストの負担になっています」と、キャンセル料を知っていたにもかかわらず、返金を求める人が出てきているそうです。
キャンセル料や違約金については、他の業界でも同様に設定されているものの、飲食店のキャンセル被害は他に比べて軽んじられていると感じる鬼頭さん。
「契約通りにキャンセルチャージを請求すれば不親切扱いです。その後口コミサイトで嫌がらせなどやられ放題です。そのため、どの飲食店も請求できず苦しんでいます」と「カキノミ」に留まらない飲食業界の辛い現状について訴えました。
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ピーク時での電話対応や、予約ミスを避けるためにも、最近は電子メール、InstagramなどのDM、予約サイトなどでも受け付ける店は増えています。また、予約した時点で全額支払いが必要な店も。
これらは、スタッフ確保や食材を準備した際に、突然のキャンセルやノーショー(キャンセルの連絡なしで来店しないこと)によって、お店側が損害を被るのを避けるためです。
今回、鬼頭さんが選んだ「テーブルチェック」は2016年は1000店舗に満たない状況だったそうですが、2017年に「キャンセルプロテクション機能」を実装すると、2024年5月には10143店舗に加盟店が増加。
予約の際に、事前決済、デポジット制、クレジットカード情報入力など、店ごとに設定ができるため、この機能を利用しているお店では、無断キャンセル発生率が1/9にまで低下しているといいます。
「弊社はルールを守るお客様が損をしないお店でありたいです。ルール違反をされて出た損失を、他のお客様からの利益やスタッフの待遇改善を据え置くことでカバーしたくないです。ルールを守らなければペナルティがある。それが当たり前になることを飲食業界にも願っています」と鬼頭さん。ルールを守ることが、お店や働く人を守ると言えそうです。
「カキノミ」は三陸産の牡蠣を仕入れ、生牡蠣(1個250円、仕入れにより値段変動)、グラタン焼き、アヒージョと牡蠣づくしのメニューが楽しめます。各店舗のInstagramで近況を発信しています。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・谷町 邦子)