我慢していても、ふとした瞬間に出てしまう「おなら」。大正製薬株式会社(東京都豊島区)が実施した「おなら」に関する意識調査によると、7割弱の人が「自分のおならが気になる」と回答しました。また、「家族といるときにおならを我慢している」と回答した人が約8割にのぼることがわかったそうです。
調査は、全国の20~69歳の男女400人(男女各200人)を対象として、2024年9月にインターネットで実施されました。
その結果、「自分のおならが気になる」と回答した人は合わせて67.1%となり、「自分以外の人のおならが気になる」(56.8%)を上回りました。
また、「自分のおならが臭いと感じる」と回答した人は合わせて71.3%。自分のおならに対して気になるのは「音」(19.8%)や「におい」(32.5%)よりも「両方」(47.8%)が半数弱を占めました。
そこで、おなら対策について「音が出ないようにする/においが臭くならないようにするためにはどうしたらよいと思いますか」と尋ねたところ、「野菜(食物繊維)を摂る」(音15.0%、におい20.8%)、「便秘の解消」(同13.5%、同16.5%)、「バランスのよい食生活」(同12.0%、同16.3%)が上位に挙げられたものの、「わからない」(同60.3%、同53.5%)が最多となり、実は対処方法がわからないという人が圧倒的に多くなっています。
また、「臭いおならになりやすいと感じる食べ物・飲み物」については、おならの代名詞である「いも類」(29.3%)を抑え、「肉類」(32.0%)「にんにく」(30.8%)が上位に挙がった一方、こちらも「わからない」が34.3%で最多となりました。
次に、「自分のおならが気になる」と回答した人にその理由を聞いたところ、男性(120人)は「マナーとして」(49.2%)、「においが臭く申し訳ないから」(43.3%)が上位に。
一方、女性(148人)では、「恥ずかしいから」(55.4%)、「おならをしたことが知られたくないから」(45.3%)が上位となり、周囲に配慮する男性に対して、とにかく恥ずかしい、人に知られたくないという女性の、微妙な意識の違いがうかがえました。
また、全体の36.8%が「おならで困った/恥ずかしい経験がある」と回答。具体的には、男女いずれも「我慢して苦しかった」(男性53.42%、女性62.16%)が最多に。
次点以降では、男性が「においで周りの人に迷惑をかけた」(28.77%)、「うんちがでてしまった」(21.92%)、女性では「においで周りの人に迷惑をかけた」「物を持ち上げたときにおならがでた」(いずれも16.22%)といった回答が挙がりました。
最後に、「おならをするのが許されるシチュエーション」について聞いたところ、「家で一人」(83.5%)、「外で一人で歩いているとき」(42.0%)、「外出先のトイレ」(30.5%)など、一人でいるシチュエーションが上位に挙がりました。
逆に「実家で家族といるとき」は22.8%となり、実に約8割が家族の前ではおならを我慢していることがわかりました。また、「夫婦・カップル・友人」と一緒にいる時はもっとNGのようで、「外で歩いているとき」(7.8%)、「家の中で一緒にいるとき」(7.5%)ともに1割に満たないことから、大切な人の前でおならはできないと感じている人が多いことがうかがえる結果となりました。
なお、おならの「におい」や「音」の原因、およびその「対策方法」について、大腸肛門病センター高野病院理事長の高野正太先生は以下のように解説しています。
【おならとは】
おならの成分の大部分は、食事中に口から取り込まれた空気です。これに大腸内の腸内細菌が食物を分解する際に作り出すガスが加わり、腸には約1リットルのガスが存在するといわれています。
これらが体外に排出されたのが“おなら”です。どちらの成分も体内に蓄積することは望ましくないため、我慢しないことが重要です。おならは「排出すべきもの」として理解するべきです。
【においが臭くならないようにするためには】
においの原因は腸内の細菌が食べ物を分解する際に発生するガスで、前日の食事内容だけでなく、日々の食生活が腸内環境に与える影響も大きく関わっています。脂肪分の多い肉やアルコールを頻繁に摂取する人は、おなら臭が発生しやすいとされています。
一方で、海藻類や水溶性食物繊維を含む食品、漬物、納豆、チーズなどの発酵食品は腸内環境を改善し、においの軽減につながります。効率よく腸内環境を整える上でビフィズス菌・乳酸菌配合のサプリメント等を摂取いただく方法もあります。においの原因となる腐敗産物の発生を抑制する効果につながります。
また、食生活だけでなく、ストレスも腸内環境を乱し、においの原因となることがあります。また、おならを我慢すると、排出されないガスが血液中に吸収されて、口臭や体臭の原因となり、別のにおいの問題を引き起こすこともあります。
【おならの音が出ないようにするためには】
正直に申し上げますと、おならの音に差が生じる理由については明確には解明できていません。力を入れて出す際の音は、腹圧の影響によるものと考えられますが、突然出てしまうおならの音は、ガスの蓄積が一因である可能性もあると思われます。このような音を避けるためには、無理に我慢せず、出せるタイミングで静かにおならをすることが望ましいと考えます。
【話題の「低FODMAP(フォドマップ)食品(※)」でガス発生をしづらくし、おならを抑えよう】
腸の動きを安定させ、腸内のガスの生成を抑えるためには、腸内細菌のバランスを維持することが不可欠です。納豆や漬物といった発酵食品、大豆製品、食物繊維が豊富な食品を積極的に摂取することをお勧めします。
しかしこれら腸内細菌に良いとされる食品を摂取すると、逆にお腹が張ると感じる人もいらっしゃいます。そこで、最近注目を集めているのが「低FODMAP(フォドマップ)食品」です。
腸内環境は個人によって異なり、状態によってはFODMAP食品が腸内細菌によって活発に発酵され、ガスが生成され、おならになることがあります。腹部の膨満感を引き起こしやすい食品は「高FODMAP食品」と呼ばれ、逆に少ない食品は「低FODMAP食品」と称されます。
腸内にガスが発生しやすくおならにつながる場合は、高FODMAP食品を避け、低FODMAP食を摂取するようにします。腹部の膨満感が軽減した段階で、高FODMAP食品を一品ずつ試し、自分に適した食品を見つけるプロセスをお勧めします。
(※)発酵性(Fermentable)」「オリゴ糖(Oligosaccharides)」「二糖類(Disaccharides)」「単糖類(Monosaccharides)」「ポリオール(Polyols)」の五つの頭文字を組み合わせたもので、消化や吸収が難しい発酵性の糖類を指します。