「こんなに良い背中、人生で二度と撮れるだろうか」
そんな問いかけと共に、側溝の中を寄り添って歩んでいくママ猫さんと子猫さんの写真が「X」で大きく注目を集めました。記事の執筆時点で写真には「47万件」もの「いいね」がついています。
共に歩む後ろ姿からは2匹の関係性や、日々どんな暮らしをしているのか、見る者の想像力に鋭く訴えかけてくる力がこの写真にはあります。
写真を見た人たちからはその可愛らしさへのコメントだけでなく、
「幸あれ」
と幸せを願う声や、
「娘とお母さんかな 尻尾が立ってるのは尊敬の意味だったと思う」
と2匹のつながりを思いめぐらせる声、
「路肩の側溝を並んで歩く親子の猫達 側溝の先には影なのか、蓋のされてるエリアなのか、暗く見える。心配だなぁ 早く目的地まで辿り着けるといいね 頑張って ‼︎」
「安全な場所で長生きして欲しいです」
などとその暮らしぶりを気遣う声も届いています。
写真を投稿した「丹下左膳」(@tangesyazen)さんにくわしい話をお聞きしました。
9年前の写真、2匹は親子
――撮影時のことを教えてください。
撮影したのは2015年の9月21日の朝7時40分頃です。2015年の春頃から野良猫さんや地域猫さんの撮影を始めて、一番撮影に熱中していた頃でした。この日は月曜日でしたが、勤務が遅めの開始で暇だったので、自宅近くの地域猫の餌やり場所に行き、撮影をしたのです。餌やりの人とは面識があり、多少お手伝いなどもしてました。
――2匹はどのような関係ですか。
写真の母娘はこの時点では地域猫ではなく野良猫でしたが、こういう子が餌やり場所に来た場合、とりあえず地域猫と同じように餌やりをしつつ、親しくなって気心が知れて来てから、捕獲して避妊手術をして地域猫にするのがいつもの流れなのです。しかし子連れの母猫なので警戒心が強くて、様子を窺っている途中でした。
――「人生で二度と撮れるだろうか……?」ともおっしゃっていました。こちらは偶然、撮影された1枚なのでしょうか?
餌を食べ終わると母娘は自分達が寝床にしている場所へ帰って行きましたが、暇だったので追いかけて撮影をしてみようと思い立ち、後を追って撮影をしました。その時に撮れたのがあの写真です。
拡散後の思い
――ご自身の撮影した一枚が大きく拡散したことへの感想はいかがですか?
この写真は実は10回以上はツイートしてるのですが、ここまで伸びたのは初めてで、非常に驚いています。最初のツイート時には数十いいね程度で、ほとんど反響がなくて「良い写真だと思うけど、なぜか好いてくれる人がないな」と思いました。その後何年かおきに幾度かツイートして、千いいねくらい付いた時には「良いと思ってくれる人がこんなに増えたか」と嬉しかったですね。その後何回か万バズしましたが、多くのいいねが付く一方で、批判的な意見も結構あって、広く話題になるのは良い事ばかりではないなと。
――ご投稿への反響にいろいろな思いがあったのですね。
地域猫活動などにしても、捨てられて引き取り手のない猫さん達を避妊手術して「もう増えないから、その代わりに餌をもらってここで生きて行くのを許してね」と言う、善意の活動だと私は思ってます。しかし世間には「地域猫活動があるから捨て猫が増えるのだろう」とか「地域猫がウチの庭に糞をして迷惑だ」とか「地域猫がウチの屋根を歩くから瓦が傷む」とか批判の声も多い。日本国憲法は思想・良心の自由を保障しているので、憲法が健全に守られている結果だとも言えるのかもしれません。
「できれば単純な『可愛い』だけでなく」
この写真には600件をこえるコメントがつき、リプライで「みんな色んな意見が有るのだなって思い乍ら(ながら)眺めてます。愛情、可愛さ、生きる事の厳しさ、悲哀、矜持、親子の絆。見る人それぞれに違った物が見える。それが彼女達の背中の良さなのだと拙者は思って居ます」という丹下左膳さん。
そのうえで、この写真に非常に多くの人が心を動かされたことについてどう感じているのかをお聞きすると「この写真を見た人々の心がどの様に動かされたのか、他人の心の中の事なので、私には詳しくは分かりません。出来れば単純な『可愛い』だけで無くもう一歩踏み込んで、同じ地球上に生きる動物同士、言葉は通じずとも通じ合う何かとか、相容れ無い何かとか、我々人類は彼女達とどう向き合って行くべきなのかとか、感じて考えるきっかけにでも成れば幸甚これに勝る物無しですね」(丹下左膳さん)としています。
(まいどなニュース特約・山本 明)