11月も半ばを過ぎて、そろそろ忘年会へのお誘いが来る時季になってきた。飲み会は楽しいけれど、飲み過ぎてしまう。飲み始めは「ゆっくり無理せず飲もう」と思っていても、場の雰囲気にのまれて気が付けば「もっと控えたらよかった」と後悔する。毎年のことなのに、なぜかやめられない。
それならばと、ビールが少しずつしか出て来ず、飲みづらいグラスを開発したのは「よなよなエール」などのクラフトビールを製造・販売する株式会社ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町/以下、ヤッホーブルーイング)だ。
飲みすぎる原因はペースが早いから
「これがビアグラス?」と思わず唸ってしまう、砂時計のような独特の形状。これが飲みづらいビアグラス「ゆっくりビアグラス」で、機能面でいちばんの特徴は…ずばり、一気飲みしづらいこと。
ヤッホーブルーイングが今年7月にインターネットで20歳~69歳の日本人1,099人を対象に行った調査結果によると、過去にお酒を飲み過ぎてしまった経験があると答えた人が507人いた。その理由で多かったのが「人と一緒に飲むと、ついつい飲むペースが上がってしまう」「すぐに飲み干してしまう」というもの。
「お酒を飲み過ぎてしまう理由の主な原因は、飲むペースにあると考えられます」
またアルコール飲用者779人に「適正飲酒のために心がけていること」を尋ねると、1位「食事(つまみ)と一緒に飲む」、2位「休肝日を設ける」、3位「意識してゆっくりと飲む」、4位「あらかじめ量を決めて飲酒をする」だった。
「お酒を飲むシーンにおいて、量の制限が認識されていることが窺えます」
酔いが回ってくると、自分の意思でペースを落としたり量を制限したりすることは難しい。ならば強制的に制限してしまおうと考案されたのが、この「ゆっくりビアグラス」なのだ。
理想の"飲みづらさ"を求めて
「流れ出るビールの量がくびれ部分で制限されるため、ゆっくりと飲むことができます」
開発にあたっては、くびれ部分の内径をミリ単位で調整した6種類の試作品で飲み比べた結果、6mmに決まった。
理想の“飲みづらさ”を追求する一方で、ビールの味わいを損ねては本末転倒だ。そのためグラスの上部をワイングラスのように湾曲した構造にして、ビールの香りを楽しめるようになっているという。
完成したグラスで16人に試してもらった結果、15人が「飲みづらい」と感じたとのこと。ほかにも「アルコールが回るのが遅かった」「少量で満足感を得られる」「入ってくる量はちょうど良かった」などの感想が寄せられたという。
砂時計のような形状のため、グラスの下にあるビールがゆっくりとしか流れ出てこない。そのため一般的なビアグラスと比べて、飲み干すまでに3倍以上の時間がかかるという。
「楽しくカジュアルに適正な飲酒を実現することができないか模索して、ゆっくり飲むことに着目しました。あえて飲みづらいグラスを開発することで、ゆっくり飲むことをユーモラスに啓発することができるのではないかと考えたのです」
当初はガラス職人が、ひとつひとつ火吹き・手捻りで製造しており、フル稼働しても1日に5個しか製造できなかった。7月に募集した初回の抽選販売10個に対して2,750件の応募があったため、製造法を見直して大量生産ができる体制を整えた。11月からは公式通販サイトで通年販売が始まっている。
▽「ゆっくりビアグラス」のスペック
容量 350ml
素材 ガラス
重さ 90グラム
サイズ 口径:約6cm 幅:約7.5cm 高さ:約16.5cm くびれ部分の内径:6mm
洗浄方法 中性洗剤を水で薄めてつけ置き、その後水でゆすぐ。
グラス製造 国内
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)