昨今、コロナ禍を経て市販薬(OTC医薬品)の市場規模が拡大しているといいます。第一三共ヘルスケア株式会社(東京都中央区)が実施した「新型コロナウイルス感染症への不安や対策と市販薬の活用」に関する調査によると、4割超の人が「風邪をひいたと思ったら市販薬で対処する」と回答したことがわかりました。その一方で、市販薬を購入するときに薬局やドラッグストアの薬剤師などに「相談」したことがある人は約3割にとどまり、専門家の知識や経験が十分に生かされていない実態が明らかになりました。
調査は、全国の20~60代の男女1000人(性年代均等割付)を対象として、2024年10月にインターネットで実施されました。
まず、「新型コロナに感染することへの不安」について聞いたところ、全体の58.0%が「心配」(とても心配13.9%、ある程度心配44.1%)と回答しました。特に60代女性では74.0%と、年代が上がるほど割合が高くなる傾向が見られました。
そこで、「衛生面における行動の変化」を尋ねたところ、手洗い・手指消毒は「増えた・変わらない」が83.5%、「減った」が16.5%、うがいは「増えた・変わらない」が83.1%、「減った」が16.9%となり、多くの人が習慣化している様子がうかがえました。
一方、換気は22.6%、マスク着用は37.3%が「減った」と回答していることから、今年の記録的な猛暑によって、マスク着用が嫌がられ、エアコンの利用が増えて換気回数が少なくなった可能性が考えられるといいます。
次に、コロナ禍を経て市販薬(OTC医薬品)の市場規模が拡大、利用機会が増えていることから、「風邪をひいたときの対処方法」を尋ねたところ、「市販薬で対処する」(44.7%)が「医療機関を受診する」(33.2%)を上回りました。
また、「市販薬を購入するときに重視すること」としては、「よく効く成分が配合されている」(46.8%)、「価格が安い」(35.6%)、「副作用が少ない」(31.6%)といった回答が上位に並びました。
その一方で、市販薬を購入するときに薬局やドラッグストアの薬剤師、登録販売者などに「相談したことがある」と回答した人は34.1%、「ない」と回答した人は58.1%となり、専門家の知識や経験が十分に生かされていない実態が明らかになりました。
「相談したことがない理由」としては「事前に購入したい製品が決まっている」(36.7%)、「成分などに特にこだわりがない」(24.2%)、「人に話しかけるのが苦手」(23.7%) などの意見が多くみられました。
さらに、市販薬のうち、薬剤師のみが販売できる「要指導医薬品」と「第1類医薬品」について、「意味や具体的な品名を知っている」と答えた割合を見ると、「要指導医薬品」が7.3%、「第1類医薬品」が10.7%にとどまり、市販薬を活用しながら自分で健康を管理するセルフメディケーションの普及の上で認知度の向上が課題であることが明らかとなりました。
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これらの調査結果を踏まえて、正木クリニック院長の正木初美医師は、「体調がすぐれないときにいきなり医療機関に行くのではなく、薬局・ドラッグストア等で薬を買う人が増えてきました。ただ、不適切な服用は逆効果になることもありますので、薬剤師など専門家に相談しながら使用し、症状が長引くときは、医療機関を受診してください」と述べています。