お見合い結婚から19年。価値観の違いから離婚を決意した医師の夫婦だが、2人の子どもの親権を巡って話し合いが膠着状態に。経済面では恵まれながらも、子どもの将来に向き合う夫婦の悩みに、離婚カウンセラー・夫婦問題研究家の岡野あつこさんが答えます。
【相談】 価値観の違いと、子どもの親権を巡る夫婦の葛藤
結婚19年目、高校生の息子と中学生の娘がいる51歳。現在、離婚を考えています。
妻とはお見合い結婚です。妻は開業医の娘で、病院勤務だった私は将来、妻の親の医院を継ぐという条件に惹かれて結婚を決意しました。
思えば、最初から私たち夫婦はすべてにおいて価値観が違っていました。性格も、妻は几帳面なタイプなのに対し、私はのんびりしたルーズなタイプ。妻から離婚の話が出たときも「まさか」ではなく「やっぱり」という心境でした。
離婚や財産分与に関しては、それほど揉めることもなく話し合いがついていますが、問題なのは子どものことです。妻は、「あなたには仕事もあるし、2人の子育ては無理だと思う」と主張していますが、私は自分のもとで今よりもっとのびのびと子どもたちを育てたいと考えています。
経済的には、どちらが引き取ることになっても、子どもたちに不自由な思いをさせることはないはずです。ただ、それだけに私も妻も子どもを手放したくないという思いが強いのです。
子どもをめぐって離婚の話が進まなくなってしまっている今、どのように解決していけばいいのかわかりません。子どもたちに「パパとママ、どちらと暮らしたい?」と迫るのは残酷でしょうか。
【岡野さんの回答】 親権と監護権を分けて考えることで、子どもと一緒に暮らせる可能性も
「イクメン」という言葉が浸透した今ですが、一般的にはまだ子どもの世話をするのは母親であることが多いもの。親権を決める際も、子どもと一緒に過ごした時間が多い母親が選ばれるケースが多数派を占めています。
実際、厚生労働省が発表しているデータでも、父親が子どもの親権を獲得している割合は15%以下。子どもの数は1人より2人、2人より3人のほうが父親の親権獲得割合は低くなっています。
ただ、子どもたちにそれほど手がかかる年齢ではなくなっているような今回の場合、経済的なこともクリアになるのであれば、父親が引き取ることになるケースもゼロではありません。
それよりも問題なのは、親権をめぐって離婚を長引かせることが与える子どもたちへの悪影響です。憎しみ合い、罵り合うような夫婦の姿をいつまでも見せることは子どもたちにとっては大きな負担になるからです。
だとしたら、たとえば親権と監護権を分けるのも一案です。親権は手放しても、監護権があれば子どもを引き取って、教育する権利はあります。監護権だけとって、離婚後の新しい生活で子どもとどう暮らしていくかを考えるほうが、人生の時間の使い方としても前向きではないでしょうか。
子どもの年齢や性格によっては、本人に考えを聞くという選択肢もアリでしょう。その際は、父親と母親、どちらについていくことになっても、それぞれメリットとデメリットがあることを正確に伝え、子どもたちの理解できる方法で納得させる努力をしましょう。
大切なのは、子どもへの愛情は離婚しても変わらないことを心をこめて伝えることです。
◆岡野あつこ(おかの・あつこ) 離婚カウンセラー・夫婦問題研究家/課題解決型マッチングメディア「リコ活」アドバイザー
「離婚しないに越したことはない! 」をモットーに、4万件以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導く。カウンセラー育成にも力を注ぎ、「マリッジカウンセラー、夫婦問題カウンセラー養成講座」を開講している。
(まいどなニュース/リコ活)