「推し活」熱に圧倒された。吉備川上ふれあい漫画美術館(岡山県高梁市川上町地頭)で開催中の「竹嶋えく展」。女性同士の恋愛や友情を描いた“百合”ジャンルで繊細なタッチと心理描写が人気の地元出身女性漫画家の初の個展とあって、国内外から熱心なファンらが次々訪れている。
出身地や性別以外は非公表の竹嶋さんは、2017年に岡山を舞台にした「晴れの国のあっぱれ団」で注目された。19年から漫画雑誌「コミック百合姫」(一迅社)で連載中の「ささやくように恋を唄(うた)う」はコミックの累計発行部数が100万部を突破し、今年4月にテレビ朝日系でアニメ化された。
会場には初期から近作までのデジタル原画や下絵、特別に書き下ろしたイラストなど89点が並ぶ。ほぼ全ての絵に竹嶋さん自身の解説が付き、<大好きな地元岡山で初めての個展を開催できることを大変嬉(うれ)しく思います>などのコメントを寄せる。見つめ合ったり、無邪気にはしゃいだりする少女のイラストなどに訪れた若者らが足を止め見入っている。男性会社員(25)=高松市=は「竹嶋さんの作品はキャラクターが魅力的で応援したくなる」と話していた。
同美術館によると、休日の来館者は多いときで通常の倍の約100人に上り、北海道から沖縄までの国内にとどまらず中国、シンガポールからもあるという。広島県境にほど近い山間部で交通アクセスに恵まれているとはいえないながら、ファンらを引きつける漫画のパワーに驚かされる。渡辺浩美館長は「竹嶋先生の人気とともに、“推し活”には時間もお金も度外視させる力があると改めて感じた。これからも漫画で地域を盛り上げたい」と話す。
「竹嶋えく展」は12月15日まで。月曜休館。
(まいどなニュース/山陽新聞)