13階の窓際に鎮座する2つのバスタブ。窓の向こうに見える下界には、JR大阪駅前の貨物ヤード跡地を再開発した「グラングリーン大阪」が広がっている。だがここは、露天風呂でもスーパー銭湯でもない、オフィスの一角だ。
自社のオフィス内にバスタブを設置した株式会社ミラタップ(以下、ミラタップ)を取材した。
仕事の時間も“くらし”の一部だからオフィスにキッチンもバスルームもつくった
近代的なオフィスの中でひときわ目立つ、窓際に2つ並んだ白いバスタブ。住宅設備機器と建築資材のインターネット通信販売を行うミラタップは、将来の事業拡大と従業員の増加など組織の拡大に対応するため、12月9日に新オフィスへ移転した。床面積は旧オフィスの1.5倍となる480坪。新オフィスに設置されたのが、先述のバスタブだ。
もっとも、実際に湯を張って入浴するのではなく、中にクッションを置き、「入浴しているような気分」で仕事ができるという趣向である。
「休憩用ではなく、あくまでデスクと同じ仕事用のスペースです」と広報担当者は言う。
企画開発課でデザイナーを務める入社5年目の島田理央さんが、バスタブで仕事していたので話しかけてみた。
――入ってみて、どんな感じですか?
「不思議な気持ちで、面白いです。お風呂に入ってるみたいだし、リラックスできます。外の景色もいいですね」
――バスタブに入るとき勇気が要りませんか?
「今日初めて入ったんですけど、ちょっと勇気が要りますね。でも慣れてきたら、居心地がよくなるかも」
このバスタブは、ミラタップの自社製品。新オフィスにはほかにもキッチン、タイル、フローリングなど多くの自社製品が随所に使われている。
移転前の旧オフィスでは、自社製品が使われているエリアが少なかった。移転の準備を始めたとき社内でアンケートをとったところ「自社製品を使ってほしい」という要望が多かったため、社員の要望を反映した内装になったのだという。
それにしても、なぜオフィス内にバスタブという発想が生まれたのだろうか。
ミラタップは「くらしを楽しく、美しく。」を経営理念に掲げ、仕事の時間も“くらし”の一部と考えているとのこと。
「1日の大部分を占める勤務時間を楽しく、美しいものとできるよう、今回のオフィスデザインを考えました」
そこからオフィス全体を「家」に見立てた設計が行われ、共同作業ができる広いキッチン、畳マットを敷いたエリア、リラックスして考え事ができる「バスルーム」などが設けられたというわけだ。
取材した日は移転後の業務初日ということもあってか、積極的にバスタブを使おうとする社員さんは他にいなかった。だが「リラックスできる」という島田さんの感想を聞いて、興味を示す社員さんも何人かいた。
「いずれは取り合いになるかもしれませんね」
今後は、このバスタブでリラックスしながら考えたアイデアから、新しい製品が生まれてくるかもしれない。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)