入れるだけで風味がまろやかに!コーヒーのお供には欠かせない定番アイテム「フレッシュ」。小さなプラカップに入ったお馴染みの形を生み出したのは、大阪・八尾市に本社を構える「メロディアン」です。
年間20億個販売されるベストセラーの誕生には、創業者が仕掛けた大勝負がありました。
お話を伺ったのは創業者の孫にあたる3代目社長・中西優紀雄さん。もともとコーヒーに入れられていたのは生クリーム。しかし価格の変動が大きいこともあり、1950年代に海外で開発されたのが植物性油脂を使ったコーヒークリーム、通称「フレッシュ」です。「メロディアン」が開発したのは小さなプラカップの容器に入ったクリームでした。そしてそれを初めて日本に持ち込んだのが、現社長から「勝負師」と呼ばれる創業者だったのです。
現社長が「私なら絶対しない」という勝負とは、一体どのようなものだったのでしょうか。
牛乳の販路がない!悩む創業者に訪れた空前の「コーヒーブーム」
昭和33年に牛乳販売会社を創業した中西喜三郎。しかし、大阪では最後発の創業だったことで大手が隅々まで販路を抑えている状況…販売先がほとんどない状況に苦悩しました。
細かな販路を見つけ出し、なんとか運営を続けていた昭和45年。同年に開催された大阪万博で缶コーヒーが販売されたことをきっかけに、国内で空前のコーヒーブームが巻き起こりました。それまでコーヒーは喫茶店で男性がタバコを吸いながら飲むものというイメージがありました。
しかし、万博で缶コーヒーを楽しむ人々の姿がテレビで紹介され、その光景が全国に広まったことが大きな要因となったのです。
この時、会社は牛乳つながりで業務用に大サイズのフレッシュを販売していました。そこで、「家庭でコーヒーを飲む時代が来る」と見込んだ喜三郎は、小さなサイズのフレッシュに活路を見出したのです。
1度目の大勝負!日持ちさせなければ…家庭用フレッシュ開発に下した「衝撃の決断」⁉
こうして始まった家庭用フレッシュの開発ですが、作ろうとしたタイミング大きな壁が立ちはだかります。それは賞味期限の問題でした。
業務用とは異なり頻繫に使わないことから、温度や環境に関わらず日持ちさせる必要があったのです。
日持ちさせるには、製造から容器に入れるまで菌の侵入を防ぐことが必要です。その設備の費用は8億円が必要でした。その頃のメロディアンの年商は10億円。普通に考えてかけられる金額ではない。
ところが、喜三郎は「ここが生き残りを賭けた勝負どころや」と社員の不安を振り切り、8億円の投資を決断し無菌設備を導入するという賭けに出たのです。社員全員倒産すると思ったという投資の結果は...
実に60日間、日持ちするフレッシュの開発に成功したのです!
商品名は、喜三郎自らの希望で「メロディアン」となりました。これは、コーヒーを「音楽=メロディ」と共に優雅に楽しむシーンにちなんだもの。こうして1975年に発売された「コーヒーフレッシュ メロディアン・ミニ」は、家庭用コーヒーフレッシュのニーズを掴み、大ヒット商品となりました!
2度目の大勝負!「ひとり用サイズ」の答えは…海外視察で遭遇した「プラカップ」。売上のために打った秘策とは⁉︎
ですが、三角パックの容器はすぐ諦めることに。その理由は、「メロディアンは便利だが、大きくて使い切れない」という客からの意見でした。家族で使ってちょうどいいと考えていたところ、消費者にとっては、ひとりで使い切れる量の方が使い勝手が良かったのです。これを受け、喜三郎はサイズを小さくすることを決意します。
またしても嫌な予感が…。開発はそう簡単なものではありませんでした。紙パックや瓶が主流だった当時、10ml以下に対応する容器がなかったのです。
ここで、ターニングポイントが訪れます。
スイスへ視察に訪れた喜三郎。すると…現地のカフェでコーヒーを注文した時、当時すでにヨーロッパで人気だった小型のプラカップに入ったフレッシュを発見したのです。喜三郎はこの出会いを逃しませんでした。
すぐさま帰国し、このプラカップを製造するための機械を海外から購入することを決断しますが…その価格、なんと4億円。
困惑する社員をよそに、8億円を投じた三角型の「コーヒーフレッシュ メロディアン・ミニ」の生産を1年で終了させ、5mlのポーション入りフレッシュを開発します。
ここまでの投資金額は2年間でトータル12億円…この商品を知ってもらい、販売につなげるため、ここでさらなる大勝負を仕掛けます。「失敗したら倒産する」という覚悟でお金をかき集め、3年間で約10億円を費やし、大々的にCMを打ち出したのです。
現社長が「これも今では考えられない。」と語る大勝負の結果、無事に功を奏し、「メロディアン・ミニ」は大ヒット。当時、1時間で2万4000個製造できる機械を24時間稼働しても追い付かなかったそうです。
こうして年間20億個売れる看板商品となった「メロディアン・ミニ」。
現在はこれに留まらず、「美と健康」という企業のテーマを軸に、スポーツドリンクの元や水に溶かして飲むコーヒーから、さらには健康を意識した液体サプリメントまで幅広く展開しています。
消費者の家庭でのニーズを先読みし、大勝負を制した創業者の功績を受け継ぎ、ポーション容器を活かした挑戦は今も続いています。
番組情報
〇番組名
日経スペシャル もしものマネー道もしマネ
〇内容
『もしもの時』に備えるマネー道!マネー活用バラエティ!
〇放送日時
テレビ大阪 第1~3日曜日 午後2時放送!放送終了後はYouTubeチャンネル、TVerで無料見逃し配信中。
(まいどなニュース/クラブTVO編集部)