装丁の豪華な本がずらりと並ぶ書斎の光景は、じつは書斎ごと手づくりで、しかもミニチュア。本棚に納められている本はどれも、縦横わずか数cmの「豆本」なのだ。本づくりもアートなんだと思わせてくれる豆本作家の「まめぽん」さんに、豆本づくりの魅力を聞いた。
デザインから印刷・製本まで1人で制作
福岡県福岡市で豆本作家として活動するまめぽんさん。作品をインターネットで販売したり、イベントに出店したりしている。
まめぽんさんがつくる豆本はどれも装丁が美しく、部屋をおしゃれに飾ってくれるアイテムにもなる。また、外観だけでなく、テキストもしっかり印刷されていてこその「本」である。豆本には、国内外の有名作家の作品が収録されているのだ。
まめぽんさんがアーティスト活動を始めたのは2009年、ベア作家の友人とドール系イベントに参加した頃からだった。表紙デザイン、印刷、製本まで全て自分で手がけているという。
「本の内容は『青空文庫』や『プロジェクト・グーテンベルグ』『プロジェクト杉田玄白』サイトの、フリーテキストを拝借しています」
1冊あたりの制作にかかる時間は、製本だけなら2時間半くらい。だが、その前に本文の割付けと表紙のデザインを行うため、1冊を完成させるには2~3日はかかるそうだ。
道具も専用のものではなく、カッターマット、三角定規、小型カッター、木工用ノコギリ、Wクリップ、木工用ボンド、洗濯糊、平筆、木板、輪ゴム、直定規、千枚通し、ヘラ、丸棒、アルミ棒など、すべてホームセンターで入手できるものばかり。
「丸棒とアルミ棒はメートル単位で売られているのを買ってきて、長さ10cmくらいにカットします」
その作業に手間がかかるため、まめぽんさんがキットで販売している「豆本の作り方冊子」に、あらかじめセットしているそうだ。
まめぽんさんは、豆本づくりのどんなところに魅力を感じているのだろうか。
「イメージした物が小さな形になることの工程も好きですが、何よりそれを可愛いといってくださるお客様がいらっしゃることです」
制作で難しい工程は「丸背のカーブを形成するところ」とのこと。
これまで2000冊以上の豆本をつくってきたまめぽんさん。今後つくってみたい豆本のテーマを尋ねると「フランケンシュタイン」「ベニスに死す」「ジキル博士とハイド氏」と、いずれも有名な作品名が挙がった。
「大作なので、豆本に出来るかどうか分かりませんが……」
ぜひ実現させて、ラインナップに加えていただきたい。
ちなみに、まめぽんさんがつくる豆本のサイズは次の3種類。主流はタテ53mm・ヨコ45mm・厚さ8~15mm。ほかにタテ65mm・ヨコ45mm・厚さ15mm、タテ40mm・ヨコ33mm・厚さ5~10mmがある。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)