教員の働き方改革の一環で、学校業務のデジタル化に注目が集まっている。滋賀の県立高では負担が大きいテストの採点を支援するシステムを昨年度に一斉導入。「便利だ」との声が上がる一方、学校によって使用率の差は大きい。入試関連を含め、幅広い業務の効率化に向けて模索が続く。
「大変だった採点が驚くほど楽になった。これがないともう無理ですね」。笑顔でそう話すのは、県立河瀬中・高(彦根市)の久保川剛宏教諭(43)。3年前に教育関係の展示会を視察した際、採点支援システムを体験し「これだと思った」。校長に導入を提案し、すぐに活用を始めた。
このシステムではまず、答案用紙をデータ化し、配点や正答などを設定する。生徒の用紙を読み込むと、選択式問題は自動認識で瞬時に採点される。記述式も問題ごとに全員の解答を一覧表示でき、比較することで採点がスムーズに。正答率や平均点といった各種データが示されるため、生徒の理解度も把握しやすいという。
久保川さんは生物の授業を担当し、定期試験では生徒約200人分を採点する。「手作業だった時は許可を得て週末に家に持ち帰らないと終わらなかった。今は学校だけで済み、採点基準のブレや点数の集計ミスもなくなった」と効果を実感。同僚らに使い方を伝え、今では教科を問わず大半の教員が利用しているという。
県教育委員会も、2023年度に県立中高全49校でこのシステムを本格導入した。今年5月に担当者が各校の校長に尋ねたところ、「役立っている」「業務時間が減った」などと半数以上が肯定的な意見だった。一部学校では採点後の答案をデータで返却する試みも行われている。
ただ、学校によって使用率に隔たりがあるとし、「義務ではなく推奨だが、とにかく使ってもらわないと良さは分からない」(県教委教職員課)。今後、一般教員への説明会も検討している。
市立の小中学校はどうか。長浜市教委によると、本年度から複数の中学で同様のシステムを試行。採点時間が半減するなど好評のため、来年度には全中学で導入したい考えだ。小学校ではさまざまな市販のテストを使っており、システムの設定が煩雑なことなどから向いていないと判断した。
一方、高校入試での活用を希望する声も出ている。県教委は、26年度入学予定者から対象の県立高新入試制度に合わせ、導入の可否を検討している。
入試業務を巡っては、出願について、中学教員が関係書類を高校に持参する現在の方法から、新入試制度に伴って「ウェブ出願」に変更する方針だ。24時間どこからでも願書の提出や受験料の納付が可能となる。県教委高校教育課は「少しでも保護者や教員の負担軽減になれば」として準備を進めている。
(まいどなニュース/京都新聞・堤 冬樹)