京都市中京区の京都市役所にほど近い河原町御池交差点にある噴水はなぜ動いていないのか-。そんな疑問が読者から寄せられた。大通りの中央分離帯に設けられた珍しい噴水の芸術作品だが、たしかに最近は水が出ているのを見た記憶がない。調べてみると、動いてはいるものの、いつでも見られる噴水ではなくなっているようだ。
噴水は御池通の河原町通-木屋町通間(約110メートル)にある。御池通のシンボルロード化を目指す一環で、フランスの作家に依頼した芸術作品「水の浮島」の一部だ。2002年3月に完成し、並んだ噴水や青く光るライト51本で水辺の生命や星々を表現している。
読者の一人は「2011年の東日本大震災以降、点灯せず、噴水もない。経費の節約を優先しているのか」と疑問視する。管理する市に問い合わせたところ、噴水は時期によって稼働しているが、ライトはずっと点灯させていないという。
背景にあるのは、やはり震災だった。噴水は当初、凍結の恐れがある1月~3月を除いて毎日稼働し、ライトも毎晩点灯していた。だが震災で全国の原発が停止し、電力の需給逼(ひっ)迫が懸念され始めた同年6月から、噴水やライトは停止させたという。
ただ噴水は作品の一部でもあるため、13年には電力需要の少ない3カ月(4、5、10月)は再開させた。さらに16年度からは祇園祭や五山の送り火で観光客が多い7月17日~8月16日も稼働させているという。
とはいえ、噴水の稼働月は震災前の計9カ月から現在は計4カ月程度に減少。さらに噴水は通行車両に水がかからないよう風速4メートル(軽い旗がはためく程度)で停止する。記者のようにタイミングが合わなければ、「ずっと止まっている」と感じてしまうようだ。
確認するため、10月下旬に現地を訪れた。待つこと5分。たしかに噴水は出た。だがこの日は風が強く20秒で終わった。13分後には2度目の噴水が15秒だけ見られた。多少の根気と幸運は必要だが、噴水は確かに見られた。
一方、気になったのは噴水の勢いだ。設置当初はアーチ状に高さ1メートル以上の水が噴き出ていたが、今では30センチ程度と弱く、市はポンプの劣化が影響とみる。噴水回りを飾るモザイクタイルもあちこちで剝がれるなど老朽化が目立つものの、指定されたタイルが高価なため、現段階で修復は難しいという。
噴水を動かす電気代などは年間約170万円(23年度)。青いライトも節電のために点灯しておらず、市の担当者は「物価の高騰もあり、節電も踏まえて停止させてもらっている」と話す。
「水の浮島」の事業費は2億5800万円。このまま朽ちていくのに任せるのか、議論が必要なタイミングかもしれない。
(まいどなニュース/京都新聞)