愛くるしい表情で人間を見つめるトイプーのオレオくん。目線が合えば笑ってこちらに近寄ってくる人間大好きなかまってちゃんですが、実は繁殖引退犬です。生まれてから4年ほどをブリーダーに管理され、繁殖の道具として使われてきました。
先住犬のメス犬に目もくれず…
オレオくんの存在を知った静岡県の保護団体・スリールは迷わず保護。団体の預かりボランティアさんのもとで世話をしながら、幸せにしてくれる家族を探すことにしました。
預かりボランティアさんの家にオレオくんはすぐに溶け込みました。この家にはメスの先住犬がいますが、全く目もくれずに人間に構ってアピール。ママさんがお家の中を移動せれば、チョコチョコとその後ろを追いかけていき、ママさんが椅子に座ればその足元にチョコン。とにかくママさんのことが大好きで、「離れたくない」「いつも一緒にいたい」とデレデレな甘えん坊でもありました。
引き戸を自ら開けてしまう器用さも
かなりの賢さも持ち合わせており、「お座り」「お手」などをすぐにマスターしただけでなく、家の引き戸を自力で器用に開けてしまうことも。
この家にいた過去のワンコでそこまでできた子はいなかったため、とにかく驚く預かりボランティアさんでしたが、その表情を前にまたオレオくんはニコニコしてチョコンと座っています。
ただ、外に出てしまう恐れも考えられます。そのため、預かりボランティアさんの家では念入りに対策を講じるとともに、きちんとしたルールも設けました。留守番中や夜間は必ずオレオくんをサークルで過ごさせ、「なんでも好きにやって良いわけではない」ことも覚えさせました。こういったルールにはかなり従順な様子も見せ、サークル内で過ごしている間は、全く騒ぐようなことはなく、ジッと静かに過ごすようにもなりました。
唯一自制がきかなくなる「ハーネス」
「甘えん坊で賢い」オレオですが、唯一自制がきかなくなるのがハーネスを見たときです。
「ハーネス=お散歩」としっかり認識しており、見ただけで大興奮。「散歩行くんですか!」「散歩なんですね!」「散歩散歩!」と、大好きな散歩を前にバタバタ体を動かし始めます。
散歩を始めても、興奮が冷めやらず全然前に歩いてくれないという本末転倒ぶりも。そんな様子もまたオレオくんのかわいい一面で、預かりボランティアさんはいつも目を細めながらお世話し続けていました。
繁殖犬の過去を感じさせない「奇跡のワンコ」
オレオくんはしばらくの間、新しい家族の出会いを待ち続けていましたが、保護から4カ月ほどが経過したところで、ついに「うちの家族として迎え入れたい」という里親希望者さんが現れました。
里親希望者さんは優しそうな夫婦。「オレオくんを中心にした生活を送りたい」と言い、当のオレオくんもすぐに馴染んで、いつものニッコリ笑顔を浮かべていました。
双方の相性の良さがわかったところで正式譲渡となり、見事オレオくんは幸せな犬生の一歩を踏み出すことになりました。
4年も繁殖犬として活動した過去を持ちながらも、これだけ元気で明るく賢いオレオくんは「奇跡のワンコ」のようにも感じます。そして、これからのオレオくんは優しい里親さんのもとで、これまで以上に明るく幸せな毎日を送ってくれるはずだとも思いました。良かったね、オレオくん。いつまでも元気で楽しく過ごしてね!
(まいどなニュース特約・松田 義人)