スラッと鼻先が長い美形のシェットランド・シープドッグのニコちゃん。2歳のメスですが、非道なブリーダーのもとで繁殖犬として飼われていました。
ブリーダーにとってニコちゃんは繁殖させるための道具でした。愛情を受けられず、ワンコらしい喜びも知らぬまま過ごしていたことで、強いストレスから抜け毛や痒みといった症状を持ち苦しい生活を日々過ごしていました。
ニコちゃんの存在を知った個人の保護ボランティアさんが迷わずレスキューし、後に静岡県の保護団体、スリールに世話を依頼。快諾した同団体は医療ケアなどの適切なお世話をし、家庭犬としてのトレーニングを行いながら新しい家族探しを始めることにしました。
悲しい顔で常に下を向いて過ごしていたニコちゃん
保護当初のニコちゃんは体中ボロボロで、常に下を向いて、悲しい顔でした。その様子は「次は私にどんなことをさせるんですか」と言わんばかり。生気のない無表情で、ただただ人間の指示に従うだけの様子でした。
2年間、何も教えられず何も知らぬまま大きくなったニコちゃんは、言わば赤ちゃんのまま。同じ月齢のワンコであればそうは動じない些細な音や物にもいちいち反応し、その度におびえた様子でした。
お世話をすることになった預かりボランティアさんは、そんなニコちゃんに対し、少しずつ慎重に「苦手」「怖い」と思うものに馴れさせ、そして、「やって良いこと」「やって悪いこと」をはっきりと教え込んでいきました。
「私、笑ったりしても良いんだ」
当初は笑顔を見せることがなかったニコちゃんでしたが、預かりボランティアさんからたっぷりの愛情を受け、日に日に心も体も元気になり、「私、笑ったりしても良いんだ」とぎこちないながらも笑顔を浮かべてくれるようになりました。
同時に、預かりボランティアさんは「他のワンコとも触れ合ってもらおう」とニコちゃんを積極的にワンコ関連イベントや、ドッグランに連れていきました。こういった場面でのワンコ仲間たちもまた、ぎこちないニコちゃんを遊びに誘ってくれ、さらにニコちゃんは「ワンコならではの幸せ」を感じてくれ、そして思い切り「本当の自分」を出せるようになりました。
「この子がどうしても気になる!」と里親希望者さん
2年間の繁殖犬生活で失ったものを短期間に取り戻していったわけですが、さらにニコちゃんの元に運命の出会いが訪れました。
ニコちゃんが参加したとある譲渡会で、健やかに成長したニコと触れ合った方が「この子がどうしても気になる!」と里親希望を申し出てくれました。
団体関係者がニコちゃんの過去のバックボーン、保護以降の経緯を細やかに話すと里親希望者さんは「大丈夫です。これからはうちでニコちゃんを最後まで『家族』としてお世話し続けます」と言ってくれました。
いつまでも元気で明るく過ごしてね!
この里親希望者さんと触れ合った後、ニコちゃんは譲渡会中ずっと爆睡をしていました。もしかしたらニコちゃん自身が里親希望者さんとの運命を感じ、「私の家族に出会えて本当に良かった」と安心して眠ってしまったように感じます。
そして、ニコちゃんは団体を卒業し、この里親さんのもとで幸せな第二の犬生を歩んでいくことになりました。
団体でお世話を受けていた間のニコちゃんは、新しい場所、新しい出会いがあるたびに目をキラキラと輝かせていました。これからの第二の犬生では、そんな機会がさらに多くなることと思います。いつまでも元気で明るく幸せに過ごしてくれると良いですね。
(まいどなニュース特約・松田 義人)