おめめパッチリのメスのポメラニアンのはるちゃん。繁殖犬として生まれてから5年間もケージの中で過ごし、人間の道具として過ごしてきたワンコでした。
静岡県の保護団体、スリールは2024年にブリーダーに介入してレスキュー。はるちゃんがこれまで感じることができなかった「人間からの愛情」をたっぷり注ぎながら、幸せな第二の犬生へと導いてくれる「家族探し」をすることにしました。
「初めての抱っこ」に…
保護後、団体に提携する預かりボランティアさんが抱っこすると、とにかく怯えて体をガチガチに固めた上、うんちを漏らしてしまいました。同じほどの月齢の家庭犬ならごく普通のことである抱っこを、はるちゃんは一度もされてこなかったように映りました。
預かりボランティアさんはそんなはるちゃんを前に胸が苦しくなる思いでしたが、ここで悲しんでいても、未来が明るくなるわけではありません。明るく元気になってくれるよう、献身的にお世話をすることにしました。
優しそうな家族が「うちの子になって」
はるちゃんの緊張は少しずつ解け始めていき、預かりボランティアさんの前でときに笑顔を浮かべ甘えてくるようにもなりました。
ここで団体では譲渡会に参加させることを決定。他のワンコたちと一緒にがんばって参加しましたが、多くの来場者のうち、娘さんがいる明るく優しそうな家族が「この子をうちの家族として迎えさせてもらえないか」と申し出てくれました。
はるちゃんのバックボーンや怖がりな性格であることも「全て承知の上です」と言ってくれ、まずはトライアルとして迎え入れられることになりました。
「私の本当の家族なんだ」
緊張のあまり固まってしまうのではないかと思われましたが、意外や意外、すぐになじんで、預かりボランティアさんの家にいた頃よりもリラックス。もしかしたら、はるちゃん自身が「私の本当の家族なんだ」とこのときすでに感じ取っていたのかもしれません。
家のパパさん、ママさんは熱心にはるちゃんと散歩に出かけました。はるちゃんの歩幅に合わせて一緒に走ると、はるちゃんもニコニコの笑顔で見つめ返します
そして、この家の娘さんもまたはるちゃんの自慢の被毛を熱心にフワフワにブラッシング。ブラッシング中は、はるちゃんも気持ち良さそうに過ごし、そしてそのうち安心してスヤスヤと眠り込んでしまうのでした。
愛情を受け続ける犬生へ
果たしてはるちゃんはこの家に正式譲渡。「本当の家族」として迎え入れられることになりました。それまでは感じることができなかった人間からの愛情や優しさを、絶え間なく受け続ける犬生を掴むことができました。
ずっとはるちゃんのお世話をし続けた預かりボランティアさんは、巣立っていくはるちゃんにこんな風に声をかけてあげました。
「はるちゃん、本当に良かったね。優しくて温かい里親さんに出会えたのは、これまではるちゃんががんばったからだよ。いつまでも元気で幸せに過ごしていてね!」
(まいどなニュース特約・松田 義人)