自然豊かな場所で暮らす、見習い猟師カメラマンの小林成彦(@naru422)さん。
山間の水路を観察していたところ、水面に「油のような虹色の膜」が浮いているのを発見。水路や河川への「油」や「洗剤」などの流出は水質事故となるため、行政への通報が必須だ。
しかし小林さんがX(旧Twitter)に投稿したポストには、その意外な正体が楽しく明かされていた。
割れる!割れるんです!
<以下、小林成彦さんのXの投稿より>
俺「助けて!水路に油が!」
俺「これは!いまだに油漏れと勘違いされがちな鉄バクテリア!鉄バクテリアの仕業!割れる!割れるんですこれ!」
俺「まさか自然由来だったとは!教えて頂きありがとうございます!」
俺「別名ソブと呼ばれベンガラの原材料としても有名なんだそうですよ!」
「石油王」になれる!?
すべて「俺」で語られる楽しいポストを投稿した小林さんは、農大の大学院で造園学を学び、「農村景観の維持管理」について研究していたという。ポスト内で言及されている「ベンガラ」とは、天然の赤色顔料で、研磨剤の一種としても使用されているそうだ。
小林さんのポストに多くの驚きの声が寄せられた。
「テンション高めの鉄バクテリア講座」
「子どもの頃はここを掘れば石油王になれる!と言い合ってた。懐かしい」
「尾瀬の水面の油膜はこれだったのか!」
「我が家の作業小屋の脇の水路にいつも浮いていて、どこからか油が漏れているのか?と思っていました」
「油」と「鉄バクテリア」の見分け方
小林さんによると、流出した「油膜」と鉄バクテリアの「被膜」を見分ける簡単な方法があるという。
「鉄バクテリア由来の被膜の場合、まず油臭がしません。そして今回投稿した動画のように、枝などで触ってみるとまるで流氷の氷のように被膜がバラバラと割れ、バラバラのまま水面を漂うのが『鉄バクテリアの被膜』の特徴です。油膜の場合は触ってもバラバラと割れずに膜状のままです。虹色の膜が水面を漂っていたらぜひ試してみてください」(小林成彦さん)
ギラギラした油のような見た目だが…
寄せられた多くのリプライのなかには、「鉄バクテリアって危険なんですか?」という疑問の声も見受けられた。
「ギラギラとした油のような異様な見た目なので、初見の方は思わずギョッとするかもしれませんが、自然界に存在する程度であれば人体には無害なようです。私が暮らす浜松市でも、鉄バクテリアの被膜を見た市民からの『油が漏れてる!』といった行政への通報も多く、誤解されがちなので、もっと広く『鉄バクテリア』の存在が認知されればいいなと思っております」(小林成彦さん)
浄水場でも利用されている「鉄バクテリア」
ただし、人体には無害だが、「茶褐色の沈殿物が排水管に詰まるなど、悪影響があるのも事実」と小林さんは言う。
「経験的に、鉄バクテリアの多いところでは水生昆虫や魚類がやけに少ないように感じます。皮膜が水面を覆って酸欠になりやすいのでは?という話も聞きますが、もし詳細な研究がされているのであれば、自分もぜひ知りたいです。一方、鉄バクテリアの生態を利用した除鉄効果に関する研究もあり、京都の浄水場では鉄バクテリアの特徴を生かして『地下水の鉄分を取り除く』という面白い利用がされています」(小林成彦さん)
「鉄バクテリア」撮影中に、絶滅危惧種を偶然発見!
小林さんはご家族と共に山村に移住して9年目。以前にも今回と同じく、「鉄バクテリアの被膜」を撮影した動画をXの固定ポストに投稿。その動画には、撮影中に偶然発見したという、絶滅が危惧されている水草「スブタ」の貴重な姿も収められている。
「動画の最後に映っている、線形で半透明のような葉を何本も伸ばしているのが『スブタ』です。トチカガミ科の植物で、かつては水田で普通に見られたようですが、現在は絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。鉄バクテリアの動画を撮影していたところ偶然この種が生えているのを発見し、舞い上がってしまいました(笑)。何せ当地に移住して丸8年、見つけることが出来なかった種でしたので」(小林成彦さん)
小さい頃から生き物が大好きだったという小林さん。「多種多様な生き物とばったり出会うことのできる山の暮らしは最高です」と、語る。
「今回投稿した鉄バクテリアもそうですが、様々な生き物の形態や生態の面白さを観察できること、さらに生き物ごとに生息する環境も異なり、そういった場所を探検できるのも魅力です。自分の場合はパソコン画面で編集する時間の多い仕事ですので、こういった自然を楽しめる時間を挟むことで、心や身体のリフレッシュにもなっています」(小林成彦さん)
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)