鹿児島市の繁華街・天文館から徒歩約20分。民家をリノベーションしたカフェ「momoyori(ももより)」は城山公園展望台へと続く坂道を登っていく途中にある。一見すると普通の古民家でカフェには見えないが、店内は山小屋をイメージし、木の温もりが漂うおしゃれな空間。オーナーの小林史和さん、礼奈さん夫婦と、事務所にいる茶白の猫店長「迫(さこ)さん」(メス、4歳)が出迎えてくれる。迫さんは初対面の人が近づくと、ほぼほぼ「シャー!」を浴びせる。その洗礼を受けた人は最初はビビるが、何度も通うとシャーはいわれなくなるという。飼い主以外、なかなかなつかないツンデレぶりが評判だ。焼酎が好きで2016年に山梨から鹿児島へ移住し、いちき串木野市の地域おこし協力隊として活動してきた小林さん。迫さんとの出会いなどについて話を聞いた。
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小林さん 猫を飼いたいとずっと思っていたのですが、いちき串木野ではアパート住まいだったので飼えませんでした。その後一軒家に移り、コロナ禍でステイホームをしていたころ、知人が「うちの近くの公園で野良猫が子どもを2匹産み、引き取れる人を探している」との情報を聞いたのが、迫さんとの出会いでした。
最初から2匹とも引き取るつもりでいたんですよ。鹿児島に来てびっくりしたのは「迫(さこ)」や「薗(ぞの)」といった、山梨では聞き慣れない名前の方がたくさんいること。そこで2匹の名前を「迫」と「薗」にしようと思っていたのですが、公園に行くと、2匹のうちキジトラの子は、ご飯を置いていても人がいなくなったことを確認しないと食べないほど警戒心が強く、捕まえることができなかったんです。それで、その子は地域の方に引き続きお任せして、簡単に捕まえられた迫さんだけを引き取ることになりました。
保護当時は生後1ヶ月くらい。ただ、子猫に多い猫カビ(皮膚糸状菌症)を発症していたので、病院で治療してもらっていたのですが、私や妻にもうつってしまい、私たちも皮膚科で治療しなければならなくなり、大変でした。
子猫のころはコロナ禍で他人との接触もほとんどなかったこともあり、「シャー」なんていわなかったんです。それが大きくなってから、なぜか知らない人が近づくと「シャー」というようになりました。私たち飼い主にはもちろんいいませんが、初対面の人が近づこうとすると、ほぼほぼ「シャー」といわれます。撫でようとでもしようものなら、猫パンチが飛んできます。でも爪は出していません。本気なら爪を立てますからね。本当に嫌なら逃げる思うんですけど、シャーといってもおやつを差し出されると美味しそうに食べます。
初めて迫さんに会った方はシャーといわれて落ち込んでしまう方も少なくないんですけど、迫さんにとっては、おそらく人が入ってきてもいい許容範囲が狭いだけなのかもしれません。なので「これが迫さん流の挨拶なので、嫌われているわけではないんですよ。びっくりしないでくださいね」とお伝えするようにしています。すると「そうか、よかった」と安心してもらえます。何度か来られて顔見知りになると、いわれなくなる方は多いです。逆に何度きてもシャーといわれる人もおられますが…。
そんなふうにツンデレですけど、僕たち夫婦にとって迫さんは子どもと同じ大切な家族。夫婦喧嘩をしたときなんか、いつもと違う空気を感じるのか「どうしたの?」と心配してそばに来てくれることも。するとすぐに仲直りしてしまいます(笑)。迫さんがいるだけで、明日も頑張ろうって思えるんです。
【店名】カフェ「momoyori(ももより)」
【住所】鹿児島市城山町16-5
【インスタグラム】@_momoyori
(まいどなニュース特約・西松 宏)