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8カ月の闘病で100万円以上の医療費が…3歳の愛猫が難病「消化管好酸球性硬化性繊維増殖症」で逝去 早期の二次診療の重要性を痛感

まいどなニュース 2025年2月2日 11時30分

「8カ月の闘病でかかった治療費は、100万円以上。ペット保険はあるとありがたいですが、上限もあるので、愛猫を迎える前から貯蓄をしていてよかったと実感しました」

そう話すエド&レンさん(@Edvard_NFC)は近年、提唱されるようになった「消化管好酸球性硬化性繊維増殖症(GESF)」という病気で愛猫エドくんを亡くした。

お迎えから約2年後に突然の下痢が見られて…

2020年12月、飼い主さんはブリーダーからエドくんを迎えた。穏やかで知的なエドくんはお風呂や爪切りもすんなりさせてくれ、ご飯前にはお手やお座りを披露してくれた。

飼い主さんは、エドくんが毎分毎秒に見せるかわいい姿に胸キュン。

「人懐っこくて、家族のそばにいることが多かった。よく、お腹を出してバンザイ寝をしていました」

平穏な日々が一変したのは、2022年10月のこと。初めて下痢が見られたため動物病院へ行くと、「急性胃腸炎」との診断が。処方された整腸剤を与えるも、状態は変わらなかった。

そこで再度、病院へ行き、血液検査をすると、白血球数(血液中の白血球の数)の数値が高かった。超音波検査やレントゲン撮影では胃の出口付近に炎症による腫れがあり、リンパ節が腫れていることが判明する。

病理検査で「消化管好酸球性硬化性線維増殖症」が判明

医師からは「消化管型リンパ腫」か「消化管好酸球性硬化性線維増殖症(GESF)」の可能性が高いと告げられた。消化管好酸球性硬化性線維増殖症とは、消化管に腫瘍のような塊ができる炎症性の消化器疾患だ。

「どちらの病気でも、ステロイド治療になると…。ただ、先に内視鏡手術で病変を採取して病理検査に出し、骨髄検査を行う必要があると言われました」

担当医のスケジュールにより、内視鏡手術は1週間後に決定。だが、翌日からエドくんの体調は急激に悪化。翌々日にはご飯や水を口にせず、トイレに行かなくなった。

このままだと1週間は持たない。そう感じた飼い主さんは担当医以外の医師でも構わないので内視鏡手術を早めてほしいと頼んだ。

その後、内視鏡手術はすぐに行われ、無事成功。ただ、自力での飲食が難しいほど胃に炎症が起きていたため、エドくんは入院。

病理検査の結果が出たのは、入院5日目。「消化管好酸球性硬化性線維増殖症(GESF)」であることが確定する。

エドくんはステロイド剤により、自力でご飯が食べられるようになったため、1週間後に退院。退院後はステロイド剤と免疫抑制剤を飲み、週1で血液検査とエコー検査を受けた。

体調は安定し、やがて通院は隔週に。飲み薬の量も減っていった。

ところが、2023年2月に再び、白血球数が上昇。他に異変は見られなかったため様子見となったが、翌月は白血球数が急上昇。薬の量を増すも体調は悪化し、再度入院となった。

糖尿病も併発…最後の手段だった「抗がん剤治療」にも挑戦

再入院後は、6日で退院。だが、白血球数の値は下がらず、貧血も見られるように。状況があまり好転しない中、ステロイド剤の副作用で血糖値が上昇。糖尿病の治療も並行することになる。

「1日2回、決まった時間に採血して血糖値を測定し、インスリン注射を打ってご飯を食べさせる必要があったので、アラームをセットして生活するようになりました」

しかし、2023年5月、体調は急激に悪化。3度目の入院となる。この時、エドくんはこれまでとは違うリンパ節の箇所に病変が発生していた。血液検査の数値も急激に悪化。ステロイド剤の量を増やし、消化器不良で吸収が悪くなっている可能性を考えて投与は経口から皮下注射に。抗がん剤も用いるようになった。

2週間ほど経った頃、現れたのが抗がん剤の副作用。骨髄の働きが低下して、血液細胞を正常に作れなくなった。さらに、ステロイド治療による肝臓へのダメージも。かかりつけ医からは、抗がん剤治療が最後の手段だと言われていた。

二次診療後に急変…最期まで家族思いだった愛しいうちの子

しかし、どうしても諦めきれなかった飼い主さんは大学病院を受診した。すると、状態の悪化は腸炎や胆管炎、胆嚢炎の併発が原因である可能性もあると告げられ、処方薬の見直しも勧められた。

この治療方針は、かかりつけ医に共有。改めて治療計画を立てようとしたが、エドくんの容体が急変。すぐに入院となったが、過去の入院時と比べても最も状態が悪く、胆嚢炎・胆管炎、膵炎、腹膜炎が起きており、黄疸や腸管からの出血、腹水も見られた。輸血などの延命措置をするも、エドくんは一時的な回復と衰弱を繰り返し、やがてショック状態に。頭も上げられない状態だったのに、エドくんは飼い主さんが顔を近づけて名前を呼ぶと甘えた声で鳴いた。

ああ、もう家に帰りたいんだな。そう感じた飼い主さんはできる治療がないこともあり、痛み止めを入れられるように点滴のルートをつけた状態でエドくんを連れ帰った。

「体中が痛くて苦しかったはずなのに、家の中を自力で歩きました。亡くなる前日にはおねだりの仕草をして、フリーズドライのささみを少し食べてくれた」

「頑張ったね」「ありがとうね」と伝えながら撫でると、エドくんは喉を鳴らし甘えた。そして退院から3日後、息を引き取った。

「どうしても職場に行かなくてはならず、家を空けたときに亡くなってしまいました。賢くて優しい子だったので、家族がいる間は頑張って生きていてくれたのかもしれません」

闘病で知った「二次診療機関」の心強さ

エドくんの闘病を経験して飼い主さんが痛感したのは、早い段階で大学病院などの二次診療機関を受診することの大切さだったそう。

「好酸球性硬化性繊維増殖症は原因が不明で予防法がなく、治療も手探り状態という難しい病気です。あまりメジャーではない病気全般に言えることですが、早い段階から大学病院などの二次診療機関で専門性の高い獣医師に治療方針を相談すると、安心も得られると思います」

なお、飼い主さんの場合は受診時に、治療の経過と検査の記録を自分でまとめた資料を持参したため、正確な情報を伝えられたという。

好酸球性硬化性繊維増殖症は食欲不振や嘔吐などの症状が現れると言われているが、猫は食べムラがあり、吐くことも多い生き物であるからこそ早期発見が難しい。

「エドは、病気が判明する直前の健康診断では異常などが見つかっていませんでした。ただ、ご飯を残してあとで食べるようになったので、食べ方が変わったのかな、味に飽きたのかな…とは思っていました。稀な病気なので、その時点で病院へ行って病名が判明したかは分かりませんが、少しでも気になることがあれば病院に相談し、検査をしてもらえばよかった」

そう話す飼い主さんはエドくんの治療中、わずか1カ月の間に急激な悪化が見られたため状態が安定しているように見えても1カ月空けず、こまめに検査することが大切だと感じた。

好酸球性硬化性繊維増殖症は、治療で症状や状態の改善が見られる場合は⾧期生存が期待できる病気だと言われている。

エドくんの闘病記録はこの先、同じ病気に悩む飼い主や猫にとって重要な情報になるだろう。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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