連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)、今週は第18週「結、管理栄養士になる」が放送され、管理栄養士となった結(橋本環奈)が大阪新淀川記念病院のNST(栄養サポートチーム)の一員として奮闘する姿が描かれた。一方、結の夫の翔也(佐野勇斗)は星河電器を退社して、理容師を目指す決意をする。
「糸島編」で、福岡西高校野球部のピッチャーとして力投したものの、甲子園に行けなかった翔也。彼が書いていた「サクセスロードマップ」の予定通りにいかなかったことで、落ち込んでいるのではないかと心配する結に向かって、翔也はこう言った。
「んなもん書き換えればいいべ! 人生は思い通りにいかねえ。1回や2回、いや何度だって失敗する。でも気にすることねえ。最終的に夢に辿り着けばそれでいいべ」
社会人野球チームに所属しながら、プロ野球選手、さらにはメジャーリーガーを夢見ていた翔也が肩を壊し、野球の夢を絶たれてから9年。その間何度も、ヘアサロンヨネダで働く聖人(北村有起哉)と愛子(麻生久美子)の姿を翔也が憧れのまなざしで見つめる姿が描かれていた。
そして翔也はついに、理容師という「最終的な夢」を見つけた。この決断について、制作統括の宇佐川隆史さんと真鍋斎さんに聞いた。
翔也は、結とは別の形で人と関わっていく仕事に
翔也の仕事遍歴を、社会人野球選手→会社員→理容師に設定した経緯について、真鍋さんはこう語る。
「翔也という人間が野球の道を挫折した後どうするかについて、脚本家の根本ノンジさんをはじめスタッフ間で、違う会社に転職するとか、食品会社に勤めて…など、いろんな選択肢を考えました。そんな中で、せっかく『ヘアサロンヨネダ』という家業があるし、『さくら通り商店街』の個人商店の跡取り問題などの背景もある。翔也が理容師を目指すことで、近い距離でより深く、彼の物語を組んでいけるのではないかと思いました。結が、病院の栄養科という組織の中で働く人なので、翔也はそれとは別の形で人と関わっていく職業、ダイレクトにお客さんの顔が見える理容師という仕事を選ぶのがベストなのではないかと考えました」
取材で知った「ピッチャーあるある」を取り入れた
また宇佐川さんは取材をする中で、ピッチャーのある特性に注目したという。
「元プロ野球選手の方が引退後、飲食店を経営されるケースが多いのだそうです。手先が器用であることや、数値を見て先を予測する能力が高いなどの特性を活かせるから、という話が印象的でした。翔也にはどんな職業が向いているのだろうか。持ち前のコミュニケーション能力と共感力の高さを活かしながら、ハサミとクシを駆使して、『髪だけでなく心も整える』という理容師の仕事は天職なのではないかと考えました。取材に基づいたリアルさを保ちながらも、かつて野球選手の道が閉ざされはしたけれど、翔也らしい幸せを見つけてほしいという、我々制作者の思いがこもっています」
病院の管理栄養士として働く結と、これから理容師を目指す翔也。「広く大きく」と「近距離でそっと」。それぞれ形は違えど、人々を「支える」夫婦になっていくことだろう。
『おむすび』番組公式サイト
(まいどなニュース特約・佐野 華英)