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13年前に発見された「奇跡」の桃が初出荷へ 黄色い果肉が特徴

毎日新聞 2024年6月19日 11時30分

 きめが細かい黄色い果肉を口に含むと、トロリとほどけて甘さが広がる――。愛知県小牧市にある白桃の果樹園で13年前に発見された突然変異の桃「こまきゴールド」が19日、初出荷される。桃が出回る初期に収穫できる「早生(わせ)」、しかも早生では珍しい「黄桃」、約300グラムの「大玉」という、三拍子そろうスター候補生だ。

 古くからの桃の産地、小牧市内の果樹園で2011年6月、山田利宏さん(57)が白桃の収穫準備をしていた時のことだった。2年前に植えた「みさか白鳳(はくほう)」の枝2本のうち、片方の枝に黄色い実が五つ成っていることに気付いた。「病気なのかも」と心配したが、枝や葉は元気そうだ。尻がとがった実の形は、明らかに白鳳とは違う。切ると、きれいな黄色い果肉が現れた。年を追うごとに甘みが強まり、将来の市場デビューを確信したという。

 これは植物の特定の枝に突然変異が起きる「枝変わり」と呼ばれる現象。枝変わりした桃は本来の実よりも劣ることがほとんどで、商品化できるのは一つの農家で50年に1度もない珍しいことだという。

 実は、祖父利一さんも枝変わりで「愛知白桃」を発見しており、3世代で2品種の発見を山田さんは「奇跡」と言う。

 山田さんは、この枝を台木に芽接ぎして苗を増やした。22年には品種登録が完了。山田さんの果樹園では現在、育苗中も含め50本が植わる。さらに意識の高い市内の農家27軒に約100本を譲渡して栽培を広めている。

 初出荷をついに迎えるが、出荷予定は約1200玉と希少なため、JA尾張中央の産直店舗「グリーンセンター桃花台店」(小牧市高根)と「ファーマーズマーケットぐぅぴぃひろば」(愛知県春日井市松本町)の2カ所だけで1週間~10日間、販売される。同JAは5年後には生産量を約2万5000玉に増やす計画で、山田さんは同JAや行政関係者も加わった「こまきゴールド生産推進協議会」の会長として先頭を走っている。

 山田さんがこまきゴールドを独り占めせず、農家仲間へ苗を譲渡するのは、小牧のブランド農産物になってほしいからだ。「小牧市といえば『こまきゴールド』、こまきゴールドといえば『小牧市』と誰もが連想するような、全国に知れ渡る存在になってほしい」と願っている。【荒川基従】

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